円安のデメリット、本質的には何もない
~容認できない悪い円安論~
【ストラテジーブレティン(353号)】
蠢動する悪い円安論
円安のおかげで景気回復、株高、日本復活ストーリーに対する確信が高まっているの
に、またぞろお決まりの面子による悪い円安論が巻き起こっている。日経新聞は「円
安にもほどがある」と言う特集を連載して円安批判に唱和している、TVでは例えば
TBSが日本衰弱の象徴としての円弱などと言う根拠薄弱な自虐的キャンペーンを張っ
ている。NISA投資の海外シフト等、資本が成長力の弱い日本から逃げていき円安にな
るとの議論で円安が解釈されている。しかし日本の低成長力は今に始まった話ではな
い。2010年以降の円高時代には、巨額の資本が成長率が高い海外へと流出したのに円
高が続いた。日本がだめだから円安になっているという議論は成り立たない。日本の
産業基盤を破壊し衰弱に導いた円高が大反転したことが、すべての事柄の基本線であ
るという明白な事実を、投資家だけではなく全ての国民に知ってもらわねばならない。
金利差、貿易収支では説明つかない円安
ドル円レートは4月29日に1990年以来34年ぶりに160円を突破、介入により日本が
連休中の5月3日に151円台まで急落したものの、再度じりじりの円安により156円
まで押し戻されている。円安の趨勢転換は困難との見方がメディアではもっぱらであ
る。この円安の原因がはっきりしない。為替の専門家が根拠とする金利差や経常収支、
貿易収支からは説明がつかない。日米金利差は、長期・短期・名目・実質のどれで見
てもすでにピークを打ち縮小傾向にある。また日本は利上げ、米国はいずれ利下げの
長期トレンドにある。今年前半に市場を襲った米国利下げ期待の剥落というサプライ
ズは既に織り込まれた。他方貿易収支、経常収支も長期改善が見えている。エネルギ
ー価格、サプライチェーンが原因となった貿易赤字要因は一巡した。これからは円安
によるJカーブ効果が効いてくる。例えばTSMC熊本工場稼働が稼働しそこから輸出、
または輸入代替が始まる、またインバウンドの増加などが黒字増加要因として強まっ
てくる。デジタル赤字、インターネット利用料などは増加しているが、今のところそ
れは限定的である。