恐るべき物価高:米国のインフレはピークを過ぎたのか?

2022/07/11

緩やかな鈍化へ

米国のインフレはようやくピークを過ぎつつある、と言えるのかもしれません。だとすれば、大きな朗報です。米国民はもちろん、インフレや金融引締めを恐れる投資家、バイデン米政権などに対してです。

ただし、米国のインフレ率(物価上昇率)が低下したとしても、そのペースは緩やかで、歴史的に見て極めて高水準のインフレは、当面継続しそうです(消費者物価指数の上昇率は5月に前年比8.6%と、約40年ぶりの高さ)。それによる生活苦は、11月の米議会選挙で、与党・民主党の大敗を招きかねません。

商品価格が下落

インフレはピークを過ぎた模様、と考えられる理由の一つは、エネルギー、食品などの価格が落ち着きの兆しを見せていることです(図表1)。それらが下落すれば、世界的なインフレ圧力は相当緩和されます。

原油などの下落については、景気減速に伴いそれらへの需要が抑制される、との観測が大きな要因です。最近、景気減速を示す経済指標が出ても、米国株は大きく下落しない場面があります。これは、景気減速でインフレが鈍り、米連邦準備理事会(FRB)が利上げを急ぐ必要がなくなる、という期待のためです。

戦争による影響

エネルギーや食品の価格は、今般の戦争により高騰すると予測されました。しかし、原油価格は一時高騰したものの、今は3月の高値を下回っています。小麦価格は現在、戦争勃発直前の水準とほぼ同じです。

原油については、ロシア産の輸入を米欧などが抑制しています。しかしロシアは、インドや中国など、この戦争に中立的な国への原油輸出を増やし、世界の原油供給量は、当初懸念されたほどには減っていません。小麦など穀物は、米欧やオーストラリアなどの豊作が、ウクライナ産などの減少を補う見込みです。

インフレ抑制策

とはいえ、米国のインフレ率低下は緩慢でしょう。例えば、原油安がガソリン安につながるまでには、かなりの日数を要します。よってバイデン米政権は、インフレ抑制策をもっと強力に行わねばなりません。

バイデン政権は、FRBの金融引締めに頼り過ぎるわけにもいきません。利上げが行き過ぎれば景気が悪化し、失業率が急上昇しかねないからです。しかし政権が行うことのできるインフレ抑制策は、多くありません。例えば、サウジアラビアなどに原油増産を求めることですが、そうしたことは強制できません。

それでも物価高

残る方策は、関税の引下げです。実際バイデン政権は、前政権が導入した対中関税の一部を引き下げる旨、近々発表すると予想されます。それによって日用品の価格が少しでも下がれば、家計は助けられます。

米国民にとり重要なのは、中国との覇権競争よりも目先の物価です(図表2)。よって関税引下げは、選挙対策としても適切です。それでも引き続き、米国の物価が日本の物価を大きく上回ることに、変わりはありません。今週から米国へ出張する予定の筆者も、米国の高すぎる物価に身構え、恐れをなしています。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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