オーストラリアで政権交代:勝敗を分けたのは何か?
異質な国だが
オーストラリアは、日本とは異質な国です。ただ、中国との付き合い方、経済成長と環境保護の両立など、似た課題もかかえています。よってオーストラリアの動きから、日本は学ぶべきことがあるはずです。
オーストラリア経済は、日本とは違い、豊富な資源や農産物に支えられています。政治は、二大勢力が激しく争っています。文化では、オーストラリアの場合、民族などの多様性を重んじているほか、夜遅くまで働くのが美徳といった風潮もありません。そうした文化は、日本もオーストラリアを見習うべきです。
総選挙が実施
ただ、政治面では、オーストラリアは必ずしも模範的とは言えません。保守連合(自由党・国民党)と労働党が二大勢力を形成していますが、双方とも内紛が絶えず、国民からあまり信頼されていないのです。
そうした背景もあり、5月21日に実施された総選挙は、やや盛り上がりを欠きました。また、保守連合は中道右派、労働党は中道左派ですが、選挙戦では、政策の違いがさほど明確になりませんでした。この点は、穏健な有権者の支持離れを恐れ、双方とも大胆な政策を示すことを控えた、との事情もあります。
前政権の実績
総選挙では結局、保守連合が議席を大きく減らし、大方の予想どおり労働党が第一党となりました(図表1)。9年ぶりの政権交代であり、23日の朝、労働党のアルバニージー党首が新首相に就任しました。
ただし、モリソン前首相が率いた保守連合の政策運営は、それほど悪かったわけではありません。減税やインフラ投資などが功を奏し、経済規模は昨年序盤に「コロナ前」を上回りました(図表2)。ウイルス対策では、厳しいロックダウンを迅速に行ったことなどで、米欧などに比べ犠牲者数は抑制されました。
敗北した原因
それでも今回の総選挙で与党が敗北したのは、モリソン氏への反感が一因です。例えば2019年には、南東部の町が森林火災に苦しむ中、同氏はハワイでクリスマス休暇を楽しみ、国民の批判を浴びました。
オーストラリアにおける森林火災や洪水の増加は、異常気象が大きな原因とみられます。それらを背景に、特に若い人々の間で、気候変動への危機感が高まっています。しかしモリソン政権は、石炭産業などへの配慮のため、この問題への対処は積極性を欠きました。この点も、選挙で与党に不利に働きました。
新政権の任務
さらに燃料高や、シドニーなどの住宅価格高騰に対する国民の不満も、与党の逆風となりました。高インフレを受け5月3日に利上げが始まったので、住宅ローン金利の上昇などが家計を一層圧迫しそうです。
よって新政権の任務は、最低賃金の引上げなどによる生活支援です。また、経済を支えるには、最大の貿易相手国、中国と適切に付き合うしかありません。かつ、環境対策を強化しつつも、産業への打撃を抑えねばなりません。いずれも容易な課題ではないものの、オーストラリアの成功を期待したいところです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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