恐怖!スタグフレーション:よみがえるオイルショックの記憶

2022/05/16

リセッションよりも恐ろしい

経済政策の担当者にとり、単なるリセッション(景気後退)より恐ろしいものがあります。それは、景気停滞(スタグネーション)と物価高(インフレーション)が同時に起こる「スタグフレーション」です。

リセッション期には総需要が減るため、通常はインフレが抑制されます。そうした状況では、中央銀行は利下げなど金融緩和を行うことで、景気を刺激することができます。ところがスタグフレーションになると、利下げをするとインフレが加速しかねないので、中央銀行による景気刺激が非常に難しくなります。

1970年代のオイルショック

景気停滞とインフレが併存するのは、スタグフレーション期のインフレについては、供給側の要因が大きいからです。その典型は、40年以上前に起こった二度のオイルショックのときです(石油危機、図表1)。

第1次オイルショック(1973年~)は中東アラブ諸国とイスラエルとの戦争に、第2次オイルショック(1979年~)はイラン革命に起因します。それらの動乱期、中東産油国が発表した原油の供給減や値上げで、世界経済は混乱に陥ったのです。日本の高度成長期も、第1次石油危機を機に終えんしました。

急激な利上げによる景気後退

現在の米国における高インフレも、供給要因が影響しています(堅調な個人消費という需要要因も関係していますが)。ウクライナ戦争や中国のロックダウンで、資源・食料や製品の供給が滞っているのです。

第2次オイルショックによる高インフレは、1980年前後から米連邦準備理事会(FRB)が果敢に利上げを進めたことなどで、収束へ向かいました。また、イラン以外の産油国が増産に努めたことなども、原油高を抑えました。ただ、急激な利上げは米国の景気後退を招き、失業率は10%超まで上昇しました。

ソフトランディングは可能か?

現在のFRBもインフレ抑制を優先し、今年3月以降、利上げを進めています。それでもパウエルFRB議長らは、金融引締めを行っても雇用などはさほど悪化しない(景気後退には陥らない)とみています。

しかし、ソフトランディング(軟着陸=景気後退を伴わず物価高抑制に成功)は本当に可能でしょうか。紛争や感染症に関しFRBは何もできず、したがって、供給側の要因による物価高圧力は残るはずです。同時に、金融引締めで総需要が減少し得るため、スタグフレーションが生じる可能性は、否定できません。

ハードランディングの恐れは?

警戒すべきは、そのようなハードランディング(大きな衝撃を伴う着地=金融引締めなどで不況入り)です。特にスタグフレーションとなれば、雇用や物価の調整に時間がかかり、景気停滞が長引くでしょう。

とはいえ現在は、代替エネルギーへの移行や省エネで、1970年代に比べると原油依存度が低下しています(図表2)。また米国では、原油自給も増えました。そのため、オイルショックのような事態が再来する可能性は、まだ低いと言えます。ただ、今の世界では何が起こるか誰にもわからず、警戒を怠れません。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
しんきん投信「トピックス」   しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融市場の注目材料を取り上げつつ、表面的な現象の底流にある世界経済の構造変化を多角的にとらえ、これを分かりやすく記述します。
<本資料に関してご留意していただきたい事項>
※本資料は、ご投資家の皆さまに投資判断の参考となる情報の提供を目的として、しんきんアセットマネジメント投信株式会社が作成した資料であり、投資勧誘を目的として作成したもの、または、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
※本資料の内容に基づいて取られた行動の結果については、当社は責任を負いません。
※本資料は、信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。また、いかなるデータも過去のものであり、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。
※本資料の内容は、当社の見解を示しているに過ぎず、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。記載内容は作成時点のものですので、予告なく変更する場合があります。
※本資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。当社の承認無く複製または第三者への開示を行うことを固く禁じます。
※本資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第338号
加入協会/一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会

このページのトップへ