「悪い円安」に備えて:資産運用で考えたいこと

2022/04/27 <>

円が最弱通貨に

円の価値が下がるのは、本来、日本人にとって残念なことです。この当然のことが、最近ようやく理解されるようになってきました。また、円安に備えた資産運用が必要か、との問題意識も広がっています。

円は今年、対米ドルで約10%の下落と、主要通貨の中で最弱です(図表1)。とりわけ3月以降に円安が加速し、ドル円は4月20日に1ドル=129円台をつけました。足元、円がやや買い戻され127円台となっていますが、依然として約20年ぶりの円安水準です。円安圧力は、今後も残る可能性が高そうです。

円安は阻止可能?

円安の根底にあるのは、金融政策の違いです。米国がインフレを抑制すべく利上げを開始したのに対し、日本では、日銀が超低金利政策を続ける姿勢を維持する中、日米金利差が拡大しているのです(図表2)。

そして、より高い収益が見込める米国資産の魅力が増す、という思わくで、ドルが買われ、円が売られています。このため、日本政府・日銀が極端な円安を阻止したいのであれば、日銀の利上げが先決です。市場原理に逆らう為替介入(通貨当局によるドル売り・円買い)を現時点で行うのは、全くの筋違いです。

円安と日本経済

しかし、政府・日銀は本当に円安を阻止したいのでしょうか。むしろ、適度な円安は歓迎でしょう。円安は、海外の売上比率が高い(かつ、政権への影響力が大きい)企業には、通常、良いことだからです。

これは、海外で得たドルなどの外貨を円に換える際、外貨高の方が円建ての金額が膨らみ、決算上の売上高が増えるためです。この点は、生産拠点が海外にあっても同じです。ただ、その場合、日本の輸出や生産は特段増加しません。よって、グローバル企業の好決算は日本全体に良いこと、とは言い切れません。

円安で物価上昇

逆に、現在は円安の悪い面が目立っています。ウクライナ紛争などで国際的な資源・食料価格が上昇する中、円安が、それらの国内価格上昇に拍車をかけているのです。日本の生活者には、迷惑なことです。

とはいえ先述のとおり、円安阻止に向けた政府の本気度は、定かではありません。また、為替介入のみならず日銀の利上げも、今は困難な選択肢です。利上げは、企業や個人、政府の借入れコスト(政府の場合は国債金利)上昇をもたらします。これに耐えられるほど日本経済は強いのか、が疑問視されるのです。

海外投資を検討

つまり円安を阻止しようにも、すぐに実行できる手段は、ほとんどありません。他方、米国は利上げを加速させつつあるので、ドル高・円安圧力は当面残りそうです。長期的にも、それに備えたいところです。

この点、円安は海外の株式・債券などの為替差益をもたらします(ただ、現地資産の下落が為替差益よりも大きくなれば投資損失に)。今後は円高局面もあり得ますが、円が積極的に買われ続けるほど、日本経済は長期的に有望でしょうか。必ずしもそう思わなければ、円安に備えた海外投資も検討すべきでしょう。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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