中国株のムードが変わった?:プラグマティックな政策で
待ちに待った発表
それは、投資家が待ちに待った発表でした。中国が3月中旬、経済成長や金融市場を支えるべく様々な策を講じる、との方針を示したのです。これにより、中国株式市場のムードが一旦、大きく変わりました。
この方針を表明したのは、劉鶴(りゅうかく)副首相らです。中国の経済政策において重責を担う同副首相は、温和な経済学者であり、習近平主席からの信頼も厚い人物です。そのため、劉鶴氏の発言内容は政府の方針と解釈され、金融市場への配慮に満ちた今回の発表を、世界の投資家が好感するのは当然です。
中国株が大幅上昇
中国本土の株価指数であるCSI300は、3月16日、前日比4.3%も上昇しました。香港上場の本土企業からなる指数(図表1)に至っては、同12.5%上昇という急上昇を示しました(足元は、やや伸び悩み)。
背景には、中国本土株や香港株は昨年以降、米国株などと比べ顕著な不振にあえいでいた、との事情があります。不振の主な要因は、不動産市場やテクノロジー企業などに向けた中国政府の規制強化に対する、投資家の警戒感です。劉鶴氏らによる今般の方針表明は、そうした警戒を和らげる効果を発揮しました。
政策の意図と内容
つまり、急進的な規制強化が一段落しつつある、と言えそうなのです。劉鶴氏らは最近、政策や規制の「透明性」「予測可能性」を強調し始めましたが、投資家を安心させたい、との意図があるのは明らかです。
経済成長の促進策としては、インフラ投資の拡充、住宅購入規制の緩和などが想定されます。政策金利の引下げも、視野に入っている模様です。また、中国では今、コロナウイルスの感染が拡大していますが、ロックダウン(活動制限)は対象となる地区や期間を極力限定、という姿勢を見て取ることができます。
プラグマティズム
以上のような施策は、経済成長や金融市場の安定性を重視する、中国政府の明確な問題認識によるものです。中国は、共産主義などの思想に凝り固まっておらず、極めてプラグマティック(実利的)なのです。
そのことは、今般の方針表明のタイミングからもわかります。この方針は、米国が利上げを決定する直前に発表されたのです。利上げで国際金融市場が不安定となり、中国から米国への資金流出が加速する事態を、劉鶴氏らは恐れたのでしょう。そのように中国は、世界や市場の動きを、非常に気にかけています。
今後の対策を注視
中国のそういった点は、世界の世論をあまり顧みず、自身の執念でウクライナ侵攻に突っ走るロシアのプーチン大統領との、鮮明な違いです。したがって、中国とロシアを同一視するのは、大きな誤りです。
ただし、中国・ロシアと米欧との対立という観測が、中国からの資金流出を促す可能性は残っています。また、規制緩和は以前から示唆されていたものの、中国の住宅市場は、まだ低迷しています(図表2)。よって、一層の経済対策が求められる中、世界の投資家は当面、中国のさらなる対策を待たねばなりません。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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