ウクライナ危機の本質:プーチン大統領たちの執念

2022/01/17 <>

今、注視すべき危機

 多数の生命が残酷に奪われるとき、世界経済が成長しても喜べません。よって、戦争勃発のリスクを、投資家も常に注視すべきです。そして今、最も危機的な状況となっているのは、ウクライナの情勢です。

 ロシアなどと共に旧ソビエト連邦(旧ソ連)を構成した同国をめぐり、米国・欧州連合(EU)vs ロシアの緊張が高まっているのです。米欧を巻き込んだ戦争がウクライナで勃発すれば、甚大な犠牲が発生するでしょう。金融市場全体への影響は現時点では小さいものの、戦争が起これば市場も混乱するはずです。

ロシアの真意は何か?

 緊張が高まっているのは、昨秋以降、ウクライナの近くに約10万人のロシア軍が集結しているためです。これにより、隣国のウクライナにロシア軍が侵攻するのでは、という警戒が米欧で広がっています。

 プーチン大統領が率いるロシア政府は、そのような侵攻意図はない、と主張しています。軍を集結させているのは、米欧の軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)がウクライナでの勢力を拡張し、ロシアの安全を脅かすのを阻止するため、と言うのです。しかしロシアの真意を、米欧は測りかねています。

一連の協議は不成功

 ロシアと米欧は互いに疑心暗鬼になっていますが、双方とも、大きな戦争を望んでいません。その勃発を回避すべく、1月10日にはロシアと米国が、12日にはロシアとNATOが、高官協議を行いました。

 しかし双方の要求には深い溝があり、一連の協議でもそれは埋まりませんでした。そのためロシアのウクライナ侵攻は、より現実味を帯びています(その場合、米欧がウクライナをどのように軍事支援するのか、全く不確実)。ただ、双方とも協議を続ける意向を示唆しているので、緊張緩和の希望は残っています。

結局、米欧の譲歩か?

 ロシアの要求は、ウクライナなど旧ソ連構成国を、今後、NATOに決して加入させないことなどです。しかし、開かれた同盟を標ぼうするNATOとしては、そのような要求を簡単には受け入れられません。

 それでも米欧は、戦争を避けるには、ある程度の譲歩を余儀なくされそうです(旧ソ連構成国におけるNATO軍の活動抑制など)。欧州は、ロシアの天然ガス(図表1)などに依存しているため、ロシアと争いたくないのです。中国との覇権競争に専念したい米国も、対ロシアでは譲歩する覚悟があるはずです。

偉大なロシアの復活

 ロシアは資源大国である上、軍事力では、依然として侮れない超大国です(図表2)。また、ソ連の解体(1991年)で冷戦は米欧が勝利しましたが、その屈辱を忘れていないロシア人は、少なくありません。

 プーチン氏を突き動かすのも、そうした屈辱と、偉大なロシアを復活させたいという執念です。同氏が昨年発表した英文の長い論説を貫くのも、ウクライナは歴史的・文化的にロシアの一部、との主張です。そうした執念が根底にある以上、対ウクライナのロシアの強硬姿勢は続き、戦争のリスクは残るでしょう。

 

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融市場の注目材料を取り上げつつ、表面的な現象の底流にある世界経済の構造変化を多角的にとらえ、これを分かりやすく記述します。
<本資料に関してご留意していただきたい事項>
※本資料は、ご投資家の皆さまに投資判断の参考となる情報の提供を目的として、しんきんアセットマネジメント投信株式会社が作成した資料であり、投資勧誘を目的として作成したもの、または、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
※本資料の内容に基づいて取られた行動の結果については、当社は責任を負いません。
※本資料は、信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。また、いかなるデータも過去のものであり、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。
※本資料の内容は、当社の見解を示しているに過ぎず、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。記載内容は作成時点のものですので、予告なく変更する場合があります。
※本資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。当社の承認無く複製または第三者への開示を行うことを固く禁じます。
※本資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第338号
加入協会/一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会