日米株価が波乱の展開に:しかし、恐れるに足らず
相場変動
金融市場は、必ずしも理屈どおりに動くわけではありません。米国や日本などの最近の株価変動(図表1,2)も、やや理解に苦しみます。だだし、この変動については、多くの理由を挙げることができます。
まず、米国などのインフレ(物価上昇)、金融緩和の修正観測、それらに伴う米国の長期金利上昇です。その一方で、コロナウイルスの感染が続いていることなどから、世界景気の勢いは、今年後半には失速気味となっています。さらに、中国の不動産市場や米国の財政をめぐる混乱も、投資家を警戒させています。
行き過ぎ
それらを背景に、米国株は9月以降、ボラティリティ(変動性)が大きく高まっています。代表的な株価指数、S&P500については、9月2日につけた史上最高値に比べ、足元4%ほどの下落となっています。
ただ、昨年来の株高も、やや行き過ぎでした。S&P500は、ウイルス問題が表面化する前の2020年の年明けと比べ、9月2日には約4割も上昇したのです。これは相当程度、利下げなど、米連邦準備理事会(FRB)の金融緩和によるものです。緩和の修正に対し投資家が身構えるのは、当然だと言えます。
日本変調
もともと不可解な動きをしがちな日本株は、最近も、米国株以上に大きく変動しています。日経平均株価は、8月下旬の2万7千円近辺から、9月中旬に3万円台へ急伸した後、2万7千円台へ戻りました。
これは、米国株と共通の変動要因に加え、主に日本の政治情勢によるものです。9月上旬、菅氏による自民党総裁選の不出馬表明を受け、国内の閉塞感が打破されるとの期待から、株価が大きく上昇しました。ところが9月下旬に岸田氏が総裁選に勝利すると、期待が一服または後退し、株安が一時加速しました。
政局要因
菅氏の退陣を歓迎した株高、岸田新政権への移行を受けた株安は、いずれも不可解です。特に岸田首相の誕生は、十分に予想されたことです。よって、その誕生を株安材料にするのは、合理的ではありません。
ただ、岸田新首相は、「成長と分配の好循環」を標ぼうするなど、格差是正に前向きです。この点は、アベノミクスの修正を意味します。しかし、所得分配により中間層の購買力を高めた方が、経済成長に寄与するはずです。また、アベノミクス時からの超金融緩和については、岸田政権下でも、ほぼ不変でしょう。
インフレ
そのため、政局要因による日本株の変動は、早晩、落ち着くと予想されます。そして、世界の経済や政策に左右される、日本株の普段の姿に戻りそうです。中でも現実的なリスクは、世界的なインフレです。
足元のインフレは、天然ガスなどエネルギーの不足や、部品供給網の混乱などのためです。これは米国などの金融緩和では解決できません。インフレが懸念される中、必要なのはむしろ金融引締めです。そうした観測で米国株などが一旦下落するのであれば、それは理屈にかなっており、健全な相場調整でしょう。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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