エバーグランデショック:中国式不動産金融危機爆誕?

2021/09/22 <>

改革は適切だが副作用も

中国は現在、経済・社会の改革を進めています。この過程で、「適度の混乱」は避けられません。不動産開発大手、エバーグランデ(中国恒大集団、図表1)の経営不安も、そうした観点から理解すべきです。

中国政府が目指すのは、不動産バブルを抑制し、住宅を購入しやすくすることです。このため、不動産関連の借入れ抑制措置を、昨年から強化しています。それ自体は、適切な改革だと言えます。ただ、これに伴い、過度な借入れにより事業を拡張してきた恒大集団のような企業が、資金繰りに窮しているのです。

中国経済に対する影響は?

問題は、33兆円相当の負債をかかえる恒大集団の経営不安が、経済にどれだけ波及するか、です。その無秩序な破たんは、同社の債券などの投資家や、同社に融資を行う金融機関に、大きな打撃を与えます。

また、中国の国内総生産(GDP)のうち、不動産部門は約4分の1のシェアを占めます。近年の経済成長も、相当程度、不動産部門にけん引されてきました。それだけに、恒大集団の破たんが不動産市場や金融市場に広く波及し、それらが機能不全となれば、中国のGDP成長率を大きく引き下げるでしょう。

リーマンショックとは違う

最悪なのは、金融危機が世界に広がるケースです。想起されるのは、2008年のリーマンショック(米国の住宅バブル崩壊などを受け、米投資銀行が破たんし、米欧の金融市場が機能不全となった事件)です。

しかし今回、危機が国内外に広がる可能性は高くありません。複雑なリーマンショックとは違い、恒大集団の負債問題は、比較的単純だからです。そして何より、中国政府は、金融危機を全力で阻止するはずです。中国の主要銀行は国有であり、それらが市場へ潤沢に資金供給を行えば、金融危機を抑止できます。

今後、想定されるシナリオ

ただ、中国政府は、恒大集団の過大な借入れによる事業の急拡大を、前から問題視していました。そうした借入れや不動産バブルを抑制する姿勢を示すために、政府は同社の安直な救済も避けねばなりません。

そのため、恒大集団は結局、経営破たんに至る可能性が高そうです。とはいえ、それまでには、政府や金融機関による支援や仲介で、同社への債権者間での調整(損失をどのように分担するか)や、同社不動産事業の引継ぎ先の確保が図られるでしょう。そうなれば、経済・社会の混乱も、最小限に抑えられます。

投資家は、中国政府を信頼

そうした観測は、市場でも主流です。実際、米国株(図表2)や日本株は、9月20日以降、恒大集団の経営不安から下落しているものの、約2~3%の下落であり、世界金融危機を示唆するものではありません。

過去10年以上の間、世界の投資家は、中国への懐疑と信頼の間で揺れ動いています。ただ、これに関しては現在、共通認識が形成されつつあります。すなわち、中国式経済体制への懐疑は、まだ残っています。それでも、中国政府は結局、柔軟な介入で経済や市場を支えるだろう、との信頼の方が優勢なのです。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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