苦しい五輪を終えて:温暖化問題を考える契機に

2021/08/16

温暖化が確実に進行

東京五輪は最後まで開催意義が不明でしたが、明白なのは、時期や環境は最悪だったということです。変異ウイルスの爆発的拡大とタイミングが重なったほか、地獄のような暑さが選手たちを苦しめたのです。

日本の酷暑は(最近の大雨も)、地球の温暖化傾向(図表1)と無関係ではないでしょう。世界的にも、異常気象やそれが原因とみられる自然災害は、明らかに増えています。7月には、中国やドイツなどで大洪水が発生し、多数の犠牲者が出ました。また現在、米国やギリシャなどで、山火事が広がっています。

温暖化と災害の関係

大洪水を引き起こしているのは、記録的な大雨です。そして大雨の頻発は、温暖化により、大気中に含まれ得る水蒸気量が増えていることが一因、と言えます(気温の1℃上昇で、飽和水蒸気量が6~7%増加)。

山火事についても、温暖化が大きな原因の一つであることは、ほぼ間違いありません。熱波などで草木が乾燥し、山や森林で火が広がりやすくなる、といった関係が考えられるからです。また、米国などの場合、発火をもたらすのは主に落雷ですが、落雷の増加に関しても、気温の上昇が影響しているようです。 

欧米の取組みが加速

相次ぐ自然災害に直面し、気候変動問題への各国の取組みも、一段と熱気を帯びています。以前から熱心なのは欧州ですが、米国でも、今年1月に発足した現政権が、この問題に正面から向き合っています。

7月には、欧州委員会が意欲的な計画を掲げました。2030年の温室効果ガス排出量を、1990年に比べ55%削減するというのです。米バイデン政権が目指すのも、その大幅な削減です。これを推進すべく、同政権は、環境対策などを柱とする3.5兆ドル規模の支出計画を、今後数か月以内に成立させる意向です。 

金融政策と環境問題

金融政策においても、環境問題が考慮されつつあります。主導するのは、やはり欧州中央銀行(ECB)です。検討されているのは、ECBによる社債購入時、環境対策に注力する企業を優先、などの措置です。

ECBほどではないにせよ、米連邦準備理事会(FRB)や日本銀行も、環境問題に言及することが増えています。中央銀行の使命は、物価の安定を通じ国民生活を支えることですが、気候変動はそれらを脅かす恐れがあるためです。例えば、異常気象で農産物が凶作となれば、食品価格の高騰をもたらします。

本当の希望と勇気を

相場の格言は「中央銀行に逆らうな」です。その中央銀行が、気候変動への問題意識を高めているのです。したがって、株式投資などに際しても、環境対策を真摯に行う企業に着目するのが賢明、と言えます。

各政府の温室効果ガス(二酸化炭素など、図表2)削減努力も、まさに急務です。この目標を引き上げるための国際会議(COP26)が11月、英国で開催されます。これこそは今年最重要のイベントであり、その意義は明確です。よって、COP26が成功すれば、本当の「希望と勇気」を世界中に届けるでしょう。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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