バイデン米大統領の目覚ましい100日(後編)
外交でバランス感覚を発揮
歴代の米政権は、「大統領就任後100日間」に、多大なエネルギーを注ぎます。それだけに、この100日間の実績は、政権の基本姿勢や政策実現力を如実に表します。そして、その後の展開を強く示唆します。
バイデン新大統領の「100日間」が示したのは、同大統領のバランス感覚です。それは特に、外交関連において鮮明です。例えば、ロシアやイランに対しては、経済制裁を続けるとともに、対話も呼びかけています。中国については、人権問題などで非難すると同時に、気候変動問題では協調の道を探っています。
中国に関しては劇的な変化
中国との関係では、貿易問題においても、前政権との相違が明白です。トランプ前大統領が「ツイート」で高関税措置を乱発したのに対して、バイデン氏の場合、そのような衝動とは全く無縁、という点です。
米欧や日本のメディアは、対中姿勢に限れば、バイデン政権はトランプ前政権と同じ、あるいは、むしろ厳しい、と言います。たしかに、人権問題ではそのとおりです(予想されたことですが)。しかし、金融市場の観点では、「ツイート」に翻弄されなくなっただけでも、政権移行に伴う、良い方向への激変です。
人種間の亀裂修復でも前進
劇的な変化は、ほかにも多数指摘できます。例えば、トランプ氏は、国内の分断をあおりました。一方、バイデン氏は、人種や党派などの違いを超えて結束すべきことを、大統領就任前から力強く訴えています。
特に人種問題で傷ついた米国を「治癒する」のが、使命の一つです。手始めにバイデン氏は、閣僚人事で、多くの非白人を起用しています。また、昨年から目立っているアジア系住民を標的とした暴力に対し、バイデン氏は、厳しく非難しています。同氏のそうした姿勢は、アジア人である日本人も歓迎すべきです。
しかし移民政策では低評価
しかし、新政権の100日間は「100点満点」とは言えません。減点分の多くは、移民に関連します。より寛容な移民・難民政策を、とバイデン氏は約束しましたが、これに関し、評価が低いのです(図表1)。
実際、バイデン氏は、多方面から批判されています。リベラル派は、移民への配慮が不十分、と言います。他方、保守的な人は、中南米などからの移民にバイデン氏は甘すぎる、と憤っています。同氏には今後、人権尊重に立つ移民・難民受入れと、現実的な移民抑制策との間で、微妙なバランスが求められます。
「100日」以降が真の試練
移民をめぐる世論の分断が示すように、米国に結束を取り戻す、というバイデン氏の目標は、実現には程遠い状況です。むしろ、党派による亀裂は、トランプ政権時よりも深まっているのが現実です(図表2)。
目先の課題に注力すべき「100日間」経過後、与党内でも、思想の違いが表面化しそうです。よって、これから審議が本格化するインフラ投資・増税策も、円滑に成立するとは限りません。とはいえ、ウイルス対策や経済対策における現政権「100日間」の目覚ましい実績は、今後のさらなる革新を予期させます。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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