苦悩する国々:インド、ブラジル、そして日本

2021/04/12

世界の感染状況は楽観できない

コロナウイルスの猛威に苦しんでいるのは、日本だけではありません。感染を抑止できず、ワクチン接種も遅れている国は、ほかにも多数あります。そのため、世界全体の新規感染者数は、いま増加傾向です。

変異の推移、ワクチンの効果など、このウイルスに関しては、予測困難な要素が多いのが実状です。そうした状況下、感染への対応は、各国間で巧拙の差がついています。よって、今年の世界経済は、現時点では感染対応が進んでいる米中にけん引される一方、感染対応に苦慮する国々に足を引っ張られそうです。

油断のためインドで感染急拡大

現在、新規感染者数が世界で最も多いのは、南アジアの大国、インドです。昨年のピークをしのぐ勢いで感染が増えているので(図表1)、一旦は回復色を強めたインド経済は、当面、苦戦を強いられそうです。 

インドでは昨年、厳しいロックダウン(外出制限など)が導入され、年終盤に感染が減少しました。しかし油断が生じ、対人距離の確保などを怠った結果が、現在の感染再拡大です。そうした中、昨年の景気後退による財政悪化などのため、再び全国的なロックダウンを行うことに対し、いまのインドは慎重です。

変異ウイルスがブラジルを襲う

インドに次ぐ新規感染者数を記録しているのが、南米の大国、ブラジルです。ただ、人口あたりの感染者数はインドを大きく上回っており、致死率も高いことから、状況はブラジルの方が深刻かもしれません。

しかも、ブラジルで流行しているのは、変異型のウイルスです。こうした中、財政状態はインド以上に厳しいので、追加の景気支援は容易ではありません(昨年は手厚い所得補助で景気をサポート)。かつ、目先の経済活動を優先するボルソナロ大統領のもとでは、全面的なロックダウンを導入することも困難です。

日本も昨年以上の厳しい苦境に

感染力の強いブラジル型は、東アジアの「先進国」、日本にも流入しています。おそらくそれも一因となり、日本でも、新規感染者数が顕著に増加しています。一方、ワクチンの普及は遅れています(図表2)。

日本では、昨年5月以降、多くの人が尽力した外出自粛の効果もあり、感染収束が一旦視野に入ったようにも見えました。また、一人10万円の給付も行われました(小さい布製マスクも)。それに対し、今年は政府や国民に「慣れと諦め」のムードが漂っている上、追加給付を行う財政余力も乏しくなっています。

自信喪失による長期衰退を懸念

インド、ブラジル、日本が苦境を打開するための方策は、極めて限られています。すなわち、ワクチンの接種を急ぐと同時に、地域などを絞った厳格なロックダウンを、1~2か月ほど実施すべきでしょう。 

ウイルスによる日本の死亡者数は、インドやブラジルよりも少数です。ただ、新興国が感染対応に苦慮するのは、ほぼ予想どおりです。他方、日本の遅すぎる対応は、「先進国」という自負を打ち砕くのに十分です。このままでは、日本はウイルスに翻弄され続け、自信を失い、経済は衰退の一途となりかねません。

 

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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