共存の哲学:株高とワクチンとウイルスと・・・
市場の楽観
コロナウイルスが世界的な関心事になり、約1年が経過しました。その感染は収まっておらず、少なくとも今後数年間、「終息宣言」はまず無理でしょう。とはいえ、人類は、決して絶望に陥っていません。
それどころか、金融市場では、楽観ムードが優勢です。特に株価は世界的に上昇し、日経平均株価(図表1)は今月、30年半ぶりに3万円を突破しました。昨年3月、感染が欧米にも広がり、市場がパニックに陥ったとき、これほどの株高を予想した人は、「能天気な人」というレッテルを貼られたはずです。
バブルか?
この株高には多数の根拠があるため、極端なバブルとは断言できません。つまり、世界的な金融緩和、米国などでの財政による景気対策、ワクチンの段階的普及、オンライン関連需要の堅調持続、などです。
それらによって景気や企業業績が改善する、といった見通しが維持される限り、株高を正当化するのは可能です。また、コロナウイルスの感染が続いたとしても、経済活動が完全に麻痺するわけではありません。その点が最近の経済指標などで確認され、極度の警戒が和らいだことも、株高を支えています。
経済は回る
実際、昨年は大半の国がマイナス成長だったとはいえ、壊滅的というほどではありません。特に後半は、感染第2波、第3波に襲われたにもかかわらず、比較的小幅なマイナスで済んだのです(図表2)。
これは第一に、感染で大打撃を受ける業種は、経済の全体を表すわけではないからです(例えば、日本では、宿泊業・飲食サービス業の就業者数は全体の約6%。ただ、そうした業種への支援は必要)。また、外食などへの支出が減れば、その相当部分は他の支出に回るので、経済全体の支出減は限定的です。
一種の諦念
第二に、いま多くの国は、昨年春に比べると、厳格なロックダウンの実施に対し消極的だからです(ドイツなどを除く)。背後にあるのは、このウイルスとは長く共存するしかない、という一種の諦念です。
たしかに、ワクチンの普及には、かなりの時間と資金を要します。よって、世界中の人が十分な免疫を得るのは、相当先のことでしょう。しかし恒久的なロックダウンは非現実的なので、適度な対人距離確保とワクチンの段階的接種で重症者を減らし、医療崩壊を防げばよい - これが欧米などの論調です。
戦いは長期
ウイルスは、種としての存在を保つべく、次々に変異します。中には、既存のワクチンがあまり効かないものもありそうです。そのため、人類とコロナウイルスとの戦いは、まだ序盤なのかもしれません。
ウイルスに勝利した!と宣言できるのは、発展途上国でもワクチンが普及し、かつ、それが全ての変異種に有効だったときです。その確証が得られるのは、最短でも数年先のことでしょう。よって、「今年夏の東京五輪を人類がコロナに打ち勝った証に」とは、どんなに能天気な人でも、さすがに言えません。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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