素晴らしき未来:合言葉は「カーボンニュートラル」

2020/12/21 <>

パリ協定5周年を、前向きなムードで記念

信じられないかもしれませんが、世界は、良い方向へ向かっています。気候変動問題への取組みにおいて、世界中で気運が高まっているのです。この歓迎すべき潮流は、来年さらに強まると予想されます。

今月中旬、この問題に関する首脳会議がオンライン形式で行われました。パリ協定の採択5周年を記念したものです。この会議が示したのも、総じて前向きなムードでした。「今世紀末まで、産業革命前に比べた世界の気温上昇を2℃未満に保つ」との同協定の目標が、達成可能なものに見えてきたからです。

温室効果ガスの削減は、現時点では不十分

5年前、196か国が参加した枠組みとして、パリ協定は喝采を浴びました。しかしその後も、温室効果ガス削減に向けた各国の取組みは十分でなく、既存の対策では、目標達成は困難です(図表1の①)。

しかも昨年、憂慮すべきことが起こりました。米国のトランプ政権が、パリ協定離脱を決めたのです(今年11月に正式離脱)。温室効果ガス排出量で、米国は世界第2位です。また、オバマ前政権のもとで、パリ協定締結を率先して推進したのが米国です。その国の離脱は、同協定への大打撃に見えました。

米中の動きを受け、パリ協定は勢いを回復

しかし、パリ協定は息を吹き返しました。大きなきっかけの一つは、11月の米大統領選で、就任当日のパリ協定復帰を公約とするバイデン氏が、気候変動を軽視するトランプ氏の再選を阻止したことです。

その前の9月には、中国が世界を驚かせました。2060年までにカーボンニュートラルを実現する旨、習主席が突如宣言したのです。中国は温室効果ガス排出量で世界第1位ですが、人口あたりでは、日米ほどではありません(図表2)。そうした事情から、これまで、排出削減の本気度が疑われていたのです。

日本なども、カーボンニュートラルを表明

カーボンニュートラル(炭素中立)は、ネット・ゼロ・エミッション(純排出ゼロ)とも呼ばれます。これは二酸化炭素などの排出量を減らした上、残る排出を、森林や様々な技術で全て吸収することです。

最近、それに向けた意欲的な目標を、各国が競い合うかのように表明しています。10月には日本と韓国が、2050年までの炭素中立を目指すと表明しました。欧州連合(EU)や英国も、同様の目標を表明済みです。来年1月に就任するバイデン次期米大統領も、2050年までの炭素中立を目標に掲げています。

コロナウイルスにより、自然の脅威を痛感

それらの意欲的な炭素中立目標が全て達成されれば、パリ協定の目標達成が、ようやく視野に入ってきます(図表1の②)。今月の5周年会議で示された前向きなムードには、そのような背景があります。

コロナウイルスの経験も、気候変動問題への取組みに勢いを与えています。自然の脅威に対し、人間はもっと謙虚になるべきだと、この経験で各国が思い知ったのです。実際、気候変動は、疫病以上に恐るべき問題です。しかし、これをめぐる最近の盛り上がりは、地球の素晴らしい未来を予感させます。

 

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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