期待が確信に:RCEPが示すアジア時代の到来

2020/11/25 <>

アジアはコロナウイルスを比較的制御

今世紀はアジアの時代、という期待は、以前から膨らむ一方です。今年、それを確信へ変える出来事が、いくつも起こっています。まずコロナウイルスに関し、欧米よりも制御されていることです(図表1)。

幸運にもアジアは、このウイルスへの免疫力が比較的強いようです(ただ、理由は不明。また、日本などでは現在、感染急増)。そしてウイルスの感染制御に伴い、中国などの景気は、いち早く回復しています。ただし、それらのことだけでは、アジアの医療や「民度」が特別に優れている、とは言えません。

アジア経済の統合深化を表すRCEP

しかし今月中旬、アジアがもっと素直に誇れることが起こりました。約8年の協議の末、広域の貿易・投資協定である「地域的な包括的経済連携(RCEP、アールセップ)」が、ついに署名に至ったのです。

RCEPが表すのは、アジア経済圏の統合深化です。参加国は、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国、中国、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの計15か国です。国々の批准後これが発効すれば、総人口や総生産で世界の約3分の1を占める、巨大な自由貿易圏が実現します(図表2)。

RCEPによる関税撤廃で貿易を促進

ただしRCEPは、政治統合も見据えた欧州連合(EU)のような枠組みとは異なります。また、環境基準の標準化なども定める環太平洋パートナーシップ(TPP)協定と比べても、緩やかな連携です。

とはいえ、RCEPが目指す関税の撤廃、税関手続きの簡素化で、域内貿易は相当拡大するでしょう。関税については、品目数で約9割の工業製品・農林水産品への関税が、20年間をかけて順次撤廃されます(米、乳製品などは除外)。直ちに効果が目に見えるわけではないものの、極めて意欲的な協定です。

摩擦にもかかわらずアジア結束は可能

特に日本にとって、RCEPは中国や韓国との初の経済連携協定です。よって、相互のさらなる貿易活性化が期待できます。同時に重要な点は、アジアの結束が可能である旨を、世界に示したことです。

アジア内でも、安全保障や政治の面では、対立や摩擦が見られます。南シナ海をめぐる中国・東南アジアの対立、歴史認識に関する日韓の摩擦などです。しかし、世の中を動かすのは特に経済面の考慮であり、したがってアジアの結束は十分可能です。それを鮮やかに実証しているのが、RCEPなのです。

自由貿易の推進でアジアが世界を主導

ただ、RCEPには、残念ながらインドが不参加となりました。背景にあるのは、中国製品の流入に対する国内産業の警戒感です。インドの参加を求め続けた日本政府の尽力は、不首尾に終わりました。

それでもRECPの署名は、歴史的な快挙です。いま欧米などでは、保護貿易や反グローバリズムの動きが絶えません。しかしその対極をなす自由貿易や国際連携は、全く途絶えていません。RCEPを通じ、そのことを世界に告知したアジアは、今後ますます、人類の繁栄をリードするに違いありません。

 

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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