希望の国、復活か:バイデン氏が世界を救う?

2020/11/16 <>

米国のウイルス対策を世界が注視

世界は希望を欲しています。よって先日の米大統領選の結果を、世界は歓迎してよいでしょう。バイデン次期米政権は、多くの国が苦しむ健康危機の対策に、現政権よりも強力に取り組むはずだからです。

米国では、トランプ現大統領が「もうじき終わる」と言い続けたコロナウイルスの感染が、いま急拡大しています。そうした中でバイデン氏は、ウイルスの脅威を直視し、その対策を最優先の課題としています。この次期大統領のもとで米国がウイルス制御に成功すれば、他国にも大いなる希望を与えます。

トランプ氏の姿勢とは実に対照的

バイデン氏は早速、専門家を集め、ウイルス対策チームを立ち上げました。そして、来年1月の新政権発足後には、検査体制の拡充やワクチンの迅速供給などからなる対策を、直ちに実行する方針です。

この動きが表すのは、科学者を尊重するバイデン氏の姿勢です。また同氏は、大統領選の勝利演説で、このウイルスを制御しない限り、経済は回復しない、と正論を述べました。これらは、科学よりも直感に頼り、抜本的な対策よりも目先の「経済を回す」ことに執着するトランプ氏とは、実に対照的です。

ワクチン開発の進展が希望を付与

今月9日、バイデン氏らにとり幸先の良いニュースが報じられました。米ファイザーと独ビオンテックによるコロナウイルスのワクチン臨床試験(治験)で、90%超の有効性が確認されたというのです。

このワクチンについては、まず米国の医療従事者などに対し、来月から配布が開始されるかもしれません。また、他社が開発を進めているワクチンの有効性も、今後続々と確認される可能性があります。そうした展望は、ウイルスの感染第3波に襲われ無力感の漂う日本に対しても、多大な希望を与えます。

株式市場の流れも変わったのか?

ワクチン期待で米国株は一時急伸しました。経済の正常化観測で、特にエネルギー株や金融株の上昇が顕著です。一方、コロナ時代の勝者とされるテクノロジー株などは、一旦やや売られました(図表1)。

ただ、ワクチンの効果はどれだけ続くのか、など、多数の不明点が残っています。また、「ワクチンの年内承認・来年の段階的普及」は、もともと株式市場では、今般の治験成功前からの基本シナリオです。よって、この成功を受け市場の流れが変わり、銘柄入れ替えが本格的に始まる、とは、まだ言えません。

バイデン次期大統領の良識を歓迎

さらに、とりわけ米欧では、副作用への不安などのため、ワクチンの接種を拒絶する人が少なくありません(図表2)。そういった不信を増幅させぬよう、ワクチンの承認は厳格に、慎重に行うべきです。

少なくともこの冬は、過度なワクチン期待を慎み、対人距離の確保など、基本的な対策を徹底せねばなりません。バイデン氏も、そのような認識を表明しています。こうした良識を備えた人物を、米国は次期大統領に選んだのです。よって、ウイルスと戦う世界で、米国は再び希望の国となり得るでしょう。

 

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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