再選失敗:トランプ氏の負けは明白
圧倒的な大差ではなかったが
トランプ氏は敗れ、来年1月、バイデン新大統領が誕生します。米国で行われた今回の選挙に関し、強調すべきは、この基本的なことです。トランプ氏は再選に失敗し、いわば不信任を宣告されたのです。
ただ、米欧メディアが予測したほどの大差はつきませんでした。とはいえ、得票数で約460万、獲得選挙人の数(図表1)で76の差が現時点で開いています。小さな差ではなく、トランプ氏の敗北は明白です。同氏は異議を唱えていますが、不正投票の根拠は極めて弱く、結果が覆るとは考えられません。
現職有利にもかかわらず敗北
通常、米大統領選では現職が有利です。1期4年では短いので、もう1期、任せてみよう、といった国民の期待などが働くからです(最長任期は2期8年)。そのため、再選失敗は、よほどの出来事です。
実際、第2次世界大戦後、8人の大統領が再選に成功しました。一方、再選に失敗し1期で終わった大統領は、3人しかいませんでした(背景には経済の不調など)。トランプ氏は、この不名誉な列に加わることになります。負けず嫌いな同氏がそのような事態を拒んでいるのは、ほぼ予想されたとおりです。
敗因は稚拙なウイルス対応など
今回も、米景気の悪化が現職の再選を阻んだ一因となりました。ただ、決定的な要因ではありません。景気の悪化は、コロナウイルスの流行のためですが、その発生は、トランプ氏の責任ではないからです。
しかし、それによる多数の死亡者に関しては、トランプ氏も責めを負うべきです。ウイルスの脅威を過小評価する同氏の姿勢が、果断な活動制限など、適切な感染防止策を妨げたからです。そして、事実や科学を軽んじる同氏の態度が浮き彫りになり、大統領としての資質を疑問視する声が強まりました。
トランプ氏への支持は広がらず
もっとも、ウイルスの流行が無かったらトランプ氏は再選された、とは言い切れません。大統領就任以来、人種対立をあおる暴言などのため、同氏の支持率は一貫して50%未満なのです(世論調査の平均)。
中には熱烈なファンもいますが、総じて言えば、トランプ氏は不人気な大統領です。にもかかわらず、今回の選挙で壊滅的な大敗を免れたのは、同氏というより、同氏の属する共和党の地盤が強固だからです。このため共和党は、同日実施の議会選では、大統領選よりも激しい接戦を演じています(図表1)。
分断は深刻だが新大統領に期待
特に上院選においては、民主党が過半数議席を獲得するのは厳しい情勢です。よって、バイデン氏の公約のうち、法人税増税などは困難になりそうです。この点、金融市場では好材料と理解されています。
ただし、米国の前途は多難です。この選挙で露呈したのは、地域性(図表2)などに基づく党派対立です。新大統領のもとで、米国はこれを克服できるでしょうか。今回、分断や対立をあおるトランプ氏に有権者が不信任を突きつけ、現職有利の通例を打ち破ったことが、その第一歩となればよいのですが。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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