中国復活:「良い知らせ」? それとも「嘘」?

2020/10/26 <>

2期連続のプラス成長

いま、良い知らせが二つあります。第一に、米欧の経済・政治をめぐる先行き不安にもかかわらず、金融市場はさほど混乱していないことです。第二に(一つめにも関連しますが)、中国経済の復活です。

中国の劇的な景気回復については、現地の活況を伝える多くの報道に加え、一連の統計が示しています。特に実質国内総生産(GDP)は、今年1-3月期に落ち込んだ後(前年比6.8%減)、4-6月期には早くもプラス成長に転じました(同3.2%増)。そして7-9月期、伸びが加速したのです(同4.9%増)。

GDPは実態を相応に反映

しかし、中国政府発表のGDPは、「嘘」ではないのでしょうか(他国のGDP統計も完璧ではありませんが)。その答えは、「嘘とは言えず、GDPは大まかな景気動向や中国経済の実力を表す」でしょう。

この点、米サンフランシスコ地区連銀による最近の分析では、過去のGDPのうち約半分は実態より過大評価、残りは過小評価とのことです。つまり中国GDPは、目標を下回った場合は過大に、目標を上回った場合は過小に発表されているものの、傾向としては実態から大きくは乖離していないようです。

他国の貿易統計が裏付け

中国経済の復活は、他国の貿易統計からも明らかです。4-6月期以降、中国景気の回復を主導したのは輸出ですが(図表1)、その増加は、中国からの輸入増を示す米国などの統計で裏付けられるのです。

中国の輸入も増えており、これこそは景気回復の証拠です(好況→他国の物品への需要増)。そして中国の輸入増は、中国への輸出増を示す米国などの統計と整合的です。日本の輸出も、中国向けの回復が際立っています(図表2)。よって、中国が他国に先行して景気回復期に入ったのは、間違いありません。

消費の活況も疑う余地なし

輸出に比べ冴えなかった中国の消費も、9月の小売売上高が前年比3.3%増となるなど、持ち直しの動きをみせています(図表1)。10月の大型連休(国慶節)中も、買い物や国内旅行が盛況を呈しました。

中でも好調なのが中国国内の自動車販売で、9月の販売台数は同12.8%増です。その好調さは、ドイツや日本などのメーカーによる販売実績で確認できます。また、衣料品や食関連などについても、中国市場の最近の活況は、現地で展開する外資系企業(例:「ナイキ」「ドミノ・ピザ」)が証言しています。

ウイルス危機も見事克服

中国景気の回復は、コロナウイルスの感染を抑えた結果です。これに関しても、信じてよいでしょう。もし感染が拡大していたら、現地に住む多数の外国人などを通じ、情報が世界に漏れるはずだからです。

つまり、中国が経済と健康の危機を乗り切ったことは、現場を知る企業や人に聞けば容易にわかります。たしかに所得格差や地方政府などの債務は、この危機の中で一段と拡大しました。しかしそうしたリスクを勘案しても、中国経済の復活は、世界経済や金融市場の安定に資する、極めて良い知らせです。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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