油断は禁物:欧州を襲う感染第2波とユーロの行方

2020/10/19 <>

欧州と米国の感染状況によってユーロドルが変動

コロナウイルスに対し油断すると、その途端に新たな感染の波が襲いかかります。そして、感染動向は、景気や金融市場に影響を及ぼします。この点でいま注視すべきは、第2波に襲われている欧州です。

ユーロ圏では、6~7月には第1波が落ち着きました(図表1)。これは米国とは対照的だったため、それを一因に、ユーロは対ドルで大きく上昇しました(図表2)。しかし8月以降、ユーロ圏でも感染が顕著に拡大しています(9月以降、英国でも再拡大)。これらを背景に、ユーロの上昇も一服しています。

ユーロ圏では特にスペイン、フランスで感染再拡大

第2波が広がったのは、まずスペインです。この国は春、約3か月のロックダウン(活動制限)で、感染をひとまず抑制しました。しかし夏に油断し過ぎたようで、パーティーなどで感染が広がりました。

さらに猛烈な勢いで感染が広がっているのが、フランスです。重症者も増え、パリでは医療態勢が限界間近とみられます。それに比べるとドイツやイタリアの感染はまだ抑制されていますが、地域により様々です。イタリアでは、経済の弱い南部でも感染が増えているのが懸念されます(第1波は北部中心)。

中欧・東欧にも第2波、北欧はスウェーデンに注目

中欧・東欧では、第1波の被害は相対的に小さめでした。ところが第2波は、それらの国々にも襲いかかっています。特にチェコでは、人口あたりの新規感染数がフランスを圧倒する勢いで増えています。

北欧でも感染が増えていますが、厳しいロックダウンを採用しなかったことで知られるスウェーデンは、現在、人口あたりでデンマーク並みの感染増にとどまっています。ただし、「ノーガード戦法」が奏効したのではありません。この国も検査を拡充しているほか、対人距離などの対策を講じているのです。

「ロックダウン疲れ」で厳しい活動制限が困難に

現在、欧州全体の新規死亡数は、第1波のピーク時に比べ約4分の1です(ただ今後急増する恐れも)。しかし危惧されるのは、ウイルスの手ごわさを見せつけられ、諦めムードが一部で生じていることです。

このムードの中で全面的なロックダウンを再導入するのは、簡単ではありません。事実、欧州各国の対応も、現時点では、地域や時間帯を絞った活動制限にとどまっています。とはいえ、そうした制限でも、皆が素直に従うとは限りません(実際、スペインの首都マドリードなどで活動制限反対の運動発生)。

第2波との戦いは長引くと見込まれ、ユーロ高を抑制か

そのため、ウイルスの感染収束には遠く、活動制限も長引くでしょう。これは景気を圧迫するので、欧州中央銀行(ECB)は、数か月以内に追加的な金融緩和(資産の買入れ増など)を迫られそうです。

それらを踏まえると、ユーロ高の動きは、しばらく頭打ちとなる可能性が高いと言えます。たしかに今年7月頃には、第1波の制御、欧州連合(EU)の統合深化、米国の感染増を受け、ユーロ高は揺るがないように見えました。しかしコロナウイルスは、ユーロ強気派にも、油断は禁物だと教えたのです。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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