悪夢ふたたび:「合意なきブレグジット」に関して

2020/09/23

英国の迷走も深刻

迷走の著しい国としては、米国が思い浮かぶでしょう。コロナウイルス対応が成功には遠い上、党派対立で政治機能がほとんど麻痺しているからです。しかし、英国の迷走も、忘れるわけにはいきません。

英国でも当初、ウイルスのリスクが軽視されました。そのため、大陸欧州に比べロックダウンなどの導入が遅れ、人口あたりの犠牲者は、米国よりも多数です(図表1)。なおかつ、後手に回ったばかりにロックダウンはかえって長引き、4-6月期の景気は、主要先進国で最悪と言えるほどに悪化しました。

ブレグジット

いま、山場を迎えつつあるのは、あの難解なイベント、ブレグジット(英国の欧州連合(EU)離脱)です。ウイルスや経済に移っていた英国民の関心も、このイベントへ舞い戻ってきています(図表2)。

ブレグジット自体は、紆余曲折を経た後、今年1月末に実現しました。ただし、今年末までは移行期間とされ、EUとの貿易関係は、まだ従来どおりです(無関税など)。そして、この期間中に、新たな貿易協定を締結する方針です。しかし、その協議は難航し、いまに至るも協定成立の目途が立ちません。

合意なき離脱

そのため、あの不穏なフレーズ「合意なき離脱」が、またも浮上しています(ただ、離脱協定による離脱はすでに実現したので、昨年懸念された「合意(=離脱協定)なき離脱」とは、やや意味が異なる)。

 移行期間延長の道は閉ざされているため、「合意(=貿易協定)なき離脱」の可能性は、相当あります。ただ、移行期間中に通関などの準備が進めば、このまま来年を迎えたとしても、英国・EU間の貿易停止といった大混乱は避けられそうです。しかし関税は発生するので、英経済への悪影響は不可避です。

北アイルランド問題

現在、蒸し返されているのは、悪夢のように悩ましい、あの問題です。つまり、北アイルランド(英国の一部)とアイルランド共和国(EU加盟国)の関係という問題が、再び立ちはだかっているのです。

この点、離脱協定の取決めは複雑です。自由貿易協定が不成立の場合、英国本土から北アイルランドへの物品輸送時に通関手続きを行い、アイルランドに輸出されるとみられる物品に関税を賦課する、などと定めたのです。北アイルランド・アイルランド間の厳格な国境管理を避けるための、苦肉の策です。

英国の一方的行動

ところが現在、英政府は、この取決めを骨抜きにしかねない国内法の導入を企図しています。その内容は、本土から北アイルランドへの物品に関税を課すか否かは、英国側が一方的に判断する、などです。

これには、EU側はもちろん英国の前首相らも、EUとの信頼関係を損なう、と猛反発しています。協議における懸案は、ほかにもあります(英国の自国産業補助にEUは難色、など)。そうした中での一方的な行動は、EUとの協議を阻害します。そして英国は、悪夢のような難題に延々と苦しむでしょう。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
しんきん投信「トピックス」   しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融市場の注目材料を取り上げつつ、表面的な現象の底流にある世界経済の構造変化を多角的にとらえ、これを分かりやすく記述します。
<本資料に関してご留意していただきたい事項>
※本資料は、ご投資家の皆さまに投資判断の参考となる情報の提供を目的として、しんきんアセットマネジメント投信株式会社が作成した資料であり、投資勧誘を目的として作成したもの、または、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
※本資料の内容に基づいて取られた行動の結果については、当社は責任を負いません。
※本資料は、信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。また、いかなるデータも過去のものであり、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。
※本資料の内容は、当社の見解を示しているに過ぎず、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。記載内容は作成時点のものですので、予告なく変更する場合があります。
※本資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。当社の承認無く複製または第三者への開示を行うことを固く禁じます。
※本資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第338号
加入協会/一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会

このページのトップへ