米テクノロジー株の変調:何が問題なのか?

2020/09/14 <>

これまでの株高は行き過ぎ

いま、米国の株式市場で最も注意すべきことは何でしょうか。それは、コロナウイルスの感染拡大に伴い急落した3月下旬以降、あまりにも急速に、かつ大きく株価が上昇したこと自体でしょう(図表1)。

特に、テクロジー株の比率が高い米ナスダック指数は、一時、安値から約76%も上昇しました(3月23日~9月2日)。より多様な大企業約500社からなる米S&P500指数も、同じ期間に約60%上昇しました。ウイルスの感染収束には遠く、景気不安も強いもとでのこの株高は、やや行き過ぎでした。

ついに大きく調整したが

それだけに、少なくとも一時的な調整は避けられません。そうした警戒感が広がる中、ついに、ナスダック指数は、9月3日から11日までに約10%も下落しました。決定的な要因は、特定できません。

しかし、米国株の上昇期は終わり金融市場の混乱期へ、とみるのは、まだ早そうです。理由として、ここでは三つ挙げられます。第一に、投資家の大半は冷静さを維持していることです。例えば、3月の市場混乱時とは違い、今般の株安場面では、債券や為替などは総じて落ち着いた動きを保っています。

テクノロジー株を支えるストーリー

第二に、コロナウイルスの流行は今後何年も続きそうです。よって、世界的に、生活や仕事のオンライン化は進む一方とみられます。このストーリーの勝ち組として、テクノロジー企業はやはり有望です。

ただ、ワクチンなどでウイルスが撲滅され、その結果オンライン化がやや鈍る可能性も、わずかにあります。しかしこの場合、経済の回復に伴い、出遅れ感の強い株式が買われるはずです(エネルギー株、金融株など)。つまり、ウイルスの行方がどう転んでも、米国株全体の一方的な下落は考えにくいのです。

FRBの重要な方針変更

第三に、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融緩和が、引き続き投資家の心理を支えるでしょう。3月下旬の株価反発も、大きなきっかけはFRBの緩和策でした。その長期化が必至とみられるのです。

この点、FRBは8月下旬、重要な方針変更を行いました。今後、インフレ率が一時的に2%を超えるのを容認する、というのです。インフレへの警戒を、明確に緩めたのです。このメッセージを発した以上、実際に(予想でなく)高インフレが持続する状態にならない限り、利上げなどはまず無理です。

それでも、少数企業への偏りは大きなリスク

ただし、今後、米国株が上下に大きく動く場面は増えるかもしれません。この市場は現在、ごく少数のテクノロジー株に偏っています(図表2)。このため、それらの株価に指数が左右されやすいのです。

また、そうした企業による寡占が強まり過ぎると、経済活力の阻害や、格差の拡大といった弊害をもたらします。さらに「株価上昇=好景気」と誤認されれば、景気対策が手薄になりかねません。このような意味でも、テクノロジー株主導の米国株上昇は、それ自体がリスクであることに変わりありません。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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