米国の不況と経済対策:またしても党派対立が障害に

2020/08/11 <>

失業給付が焦点

米国を悩ませるのは、鋭い党派対立です(民主党vs共和党など)。それでも、今年3月には、超大型の経済対策が迅速に成立しました。中でも重要なのは、失業給付の拡充です(週600ドルを追加給付)。

その期限が7月末に切れたため、新たな対策が急務です。しかし、またしても党派対立により、いまだにこれが成立しません(近々成立の可能性あり)。トランプ政権は大統領令(失業給付を減額した上で延長など)で当座をしのごうとしていますが、大統領権限でそれが可能なのか、法的な疑義があります。

最悪のマイナス成長

コロナウイルスの流行で、米景気は多大な打撃を受けています。4-6月期の実質国内総生産(GDP)は、戦後最悪のマイナス成長となりました。前期(1-3月期)比で年率32.9%減という、極端な値です。

ただし、年率換算前では9.5%減です。これを年率に換算するのは、その四半期の縮小ペースが1年間続く、との仮定に立っています。しかし、米国で3月に導入されたロックダウン(外出制限など)は、1年間続くわけではありません(実際、5月以降に緩和)。そのため、年率換算値は現実離れしています。

「経済活動が停止」は言い過ぎ

また、3月にはロックダウンが始まっていた以上、その影響を考えるには、4-6月期のGDPに関し、1-3月期比でなく昨年同期(4-6月期)比をみるべきかもしれません(ただ、これも9.5%減。図表1)。

米GDPの約7割を占める個人消費は、昨年同期比10.7%減でした。つまりごく大まかに言えば、コロナウイルスの流行に伴い、米国の経済規模や実質支出が、いずれも1割ほど縮小・減少したのです。大きな落ち込みではあるものの、ロックダウンで経済が「停止」「崩壊」した、というのは言い過ぎです。

失業給付が人々を救済

もっとも、3月の経済対策のおかげで、その程度のマイナスで済んだ、と言えます。米国では4月以降に失業率が急上昇したにもかかわらず、失業給付などで、個人所得はむしろ増えたのです(図表2)。

そのように家計を支えた失業給付の拡充が、7月末に期限を迎えました。この期限は、その頃にはウイルス感染が収束しているはず、との観測に基づいていました。実際には、感染は再拡大し、営業規制などを再強化せざるを得ない状況です。よって、失業給付が打ち切られれば、多数の人が困窮します。

党派間の溝は深いが

それを避けるための協議は、難航を極めています。従来と同額の失業給付を訴える民主党と、財政赤字への懸念などからその減額を求める共和党およびトランプ政権との溝が、なかなか埋まらないのです。

事実、米国の財政赤字は膨張しつつあり、将来、増税などの必要が生じます。その論争は、党派間の亀裂をさらに深めるでしょう。しかしそれは、将来に先送りすべき対決であり、今の「国難」のもとでは、応急措置が必須です。党派対立を超え、米国は(束の間の)結束を示すことができるのでしょうか。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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