金(ゴールド)の輝き:それが示すのは米国の衰退か?
なぜ「安全資産」なのか?
世界が不透明感に覆われる今、ひときわ輝きを放つ資産があります。金(ゴールド)です。7月下旬には、米国での先物価格が過去最高を更新しました(図表1)。その輝きは、容易には消えないでしょう。
金はそれ自体が美しい上に、耐久性があり、希少性も高い貴金属です。そのため、投資においては「安全資産」とされています。これは、価格が下落しないということでなく、国の興亡盛衰を超越して価値を保ち続ける、と理解されるべきです。この点は、発行国の信用力を反映する通貨との大きな違いです。
上昇の理由①世界経済の先行き不透明感
金の価格が上昇しているのは、理屈どおりと言えます。コロナウイルスや米中対立を背景に、世界経済の先行きは極めて不透明です。これを背景に、安全資産としての金に投資資金が流入しているのです。
金については現物を購入することもできますが、最近の相場を主導しているのは、間接的な金投資です。特に、金に投資する上場投資信託(ETF)を通じた資金の純流入額は、今年前半に395億ドルと、過去最高の年間流入額(2016年、230億ドル)を大幅に上回りました(金の調査機関WGCによる)。
上昇の理由②超金融緩和に伴う金利低下
ただし、資産としての金の弱点は、それ自体はインカムゲイン(利子や配当など)を生まないことです。このため、平常時には、安定的な利子が期待できる米国債などが、投資対象としては選好されます。
しかし今は、平常時ではありません。コロナショックを受け、米国などで、経済を支えるための超金融緩和(利下げなど)が行われています。これに伴い、10年物の米国債利回りは、0%台まで低下しています(図表2)。ここまで長期金利が下がると、利子を生まない金の性質は、もはや弱点と言えません。
上昇の理由③将来的なインフレ懸念
また、インフレ(物価上昇)に弱いのが、一般的な債券の特徴です。この点、0%台という長期金利は、当面1%台で推移するとみられる米国のインフレ率を、すでに下回っています(=実質金利がマイナス)。
これに対し、金は実物資産である以上、少なくともインフレ率に追随して値上がりするものと期待されます。そして、大規模な財政支出とセットになった米国の超金融緩和は、通貨の大量供給によって、将来のインフレ率を大幅に高める可能性があります。そうした思わくも、金価格の上昇を支えています。
上昇の理由④米国の苦境を反映したドル安
また、米国の金融緩和はドル安を促します(実際、主要通貨に対し足元下落。図表2)。これも金価格の上昇要因です。ドル安で、他通貨の保有者は、ドル建ての金を買いやすくなるからです(→金需要増)。
以上のように、金の値上がりには多くの理由があります。ただし、根底にあるのは、コロナウイルスの感染が収束せず、極端な経済政策に頼らざるを得ない米国の苦境です。つまり、金価格の上昇は、世界の先行き不透明感や、米国の衰退を示しているとすれば、決して喜ぶべき現象とは言えないでしょう。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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