ユーロ高の背景:EU復興基金は欧州結束の象徴

2020/07/27

極めて前向きな妥協

政治には、妥協の技術という面があります。EU(欧州連合)27か国の首脳が7月21日に合意したEU復興基金も、妥協の産物にほかなりません。しかし、これは高く評価されるべき前向きな妥協です。

この基金は、コロナウイルスによる打撃の深刻な加盟国に対し、EUが財政支援を行うものです。今般激論となったのは、どれだけの額を補助金(返済義務なし)とするか、です。これに関し妥協に至り、EUの結束を世界に示したのです(ただし、欧州議会の同意を要し、基金稼働は来年初からの見込み)。

補助金の規模は縮小されたが

首脳らが合意した額は、7,500億ユーロ(約93兆円)の基金のうち、補助金3,900億ユーロ、融資3,600億ユーロです。補助金は、ドイツやフランスが提唱した5,000億ユーロからは縮小されました。

この点で独仏が妥協したのは、補助金の抑制を強硬に主張する国々の合意を取り付けるためです。補助金は、事実上、経済のぜい弱な国(イタリア、スペインなど)への財政資金の移転です。そのため「倹約諸国(オランダ、オーストリア、デンマーク、スウェーデン、フィンランド)」が難色を示したのです。

統合深化という意義は維持

それでも、補助金が基金の過半を占める内容となったことで、復興基金の持つ象徴的意味は、基本的に維持されました。つまり、補助金主体であることは、EUが財政統合に向かう重要な一歩と言えます。

EUでは、コロナウイルスの新規感染が減少し(図表1)、景気は回復局面に転じています。しかし、イタリアなどの場合、EUの財政支援なくして持続的回復をとげるのは困難です。そういった国で不況が長引けば、EU離脱の動きが再燃しかねません。そうした危機意識が、復興基金の合意を促しました。

EUは歴史的転換期に

コロナウイルスを別としても、EUは今、大きな転換期にあります。自国第一主義に傾斜する米国と、ますます自己主張を強める中国との間で、いかにしてEUは存在感を保つか、が問われているのです。

また、今年1月には、英国がEUから離脱しました。それだけに、大陸欧州の結束が試されています。ただ、英国の離脱は、EU統合を深める上ではむしろ追い風です。実際、今般の復興基金も、仮に英国がEUの一員であったならば、合意はもっと難航したはずです(英国は統合深化に消極的だったため)。

ユーロ高・ドル安トレンドへ?

復興基金をめぐる合意が好感され、欧州の株式・債券価格は総じて一旦上昇しました。ただし、金融市場の中長期的観点から最も重要なのは、基金の原資がEUを発行体とする債券で調達されることです。

こうしたEU共同債の発行が本格化すれば、投資家にとり、ユーロ建ての貴重な安全資産となります。それは、投資資金の米国から欧州への移動を促します。そのような予測、およびコロナウイルス対策の巧拙を背景に、中長期的なユーロ高・ドル安トレンドが、すでに始まったのかもしれません(図表2)。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/newest_report/contents_type=8&type=topics

 

 

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