舞台は新興国:コロナウイルス問題は正念場に
感染中心地の変転
今年2月頃まで、コロナウイルスは中国など主にアジアの問題と思われました。しかしその後、感染の中心地は欧州へ移行しました。これも変化し、6月以降の中心地は、米国と多くの新興国です(図表1)。
いま主舞台となっている国々には、ほぼ共通の点があります。ロックダウン(外出・移動の制限、休業など)で感染を一旦抑制したものの、その緩和や解除に伴い、感染が再加速しているのです。しかし、経済や社会への影響の大きさを踏まえると、全面的なロックダウンを再導入するのは、事実上困難です。
特に資源国は苦戦
とはいえ、感染抑止において、ロックダウンは有効でしょう。よって、地区や業態、時間帯を限定してそれを行うのが、最近の主流です。実際、インドや南アフリカなどでも、そうした動きがみられます。
いずれにせよ大半の新興国は、少なくとも向こう1年間、景気浮揚に苦戦しそうです。感染対策の結果、または奇跡的に自国のウイルス感染が収まったとしても、世界景気や資源価格に翻弄される状況は続くでしょう。中東、ロシア、中南米などの場合、資源(原油など)の輸出への依存度が高いからです。
東南アジアも安泰でない
東南アジアの場合、財政などが総じて堅固である上、コロナウイルスの犠牲者は、比較的少数です(中でもベトナム、タイ、カンボジアなど仏教徒の多い国。ただ、文化・宗教と死亡率との因果関係は不明)。
しかし、東南アジアでも、海外からの観光客や出稼ぎ労働者の送金が激減しています。また、中国経済も正常化には至っていません。これらより今年は、新興国全体の成長率がマイナスに沈みそうです(比較可能な1980年以降初、図表2)。新興国全体では成長して当然、との見方は、修正せねばなりません。
金融市場はひとまず安定
それでも新興国を含む世界の金融市場は、3月に大荒れとなった後、かなりの程度、安定感を回復しました。主要な新興国通貨も、対ドルで底堅い動きをみせています(アルゼンチンペソなど一部を除く)。
これについては、米国の超金融緩和により、ドルが潤沢に供給されていることが寄与しています。さらに、20か国・地域(G20)は4月、低所得国の対外的な債務に関し、少なくとも今年末まで返済猶予に応じる、との方針で合意しました。こうした国際協調の動きも、金融市場でひとまず好感されました。
最大の問題は貧困の深刻化
ただ、最も危惧されるのは貧困層の状況です。世界人口に占める極貧層(1日1.9ドル未満で生活)の比率は、過去20年ほど低下傾向にありました。今年の世界不況で、それが上昇に転じる見通しです。
貧困層の増加は、人道に反するだけでなく、これに伴う不満の蓄積は、政治や経済の不安定要因になります。したがって、コロナウイルスの中心地が、貧困層の多い新興国(並びに世界経済の基軸である米国)へ移った今、ウイルスとの闘いにおいて、世界は大きな正念場を迎えたと言わねばなりません。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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