中国株バブル再来か?:それとも、今回は違うのか?
突然の投資推奨で株高加速
中国株は、大きなバブルの発生・崩壊を二度経験しました(2008年と2015年に崩壊、図表1)。そして今、バブルがまた始まったのかもしれません。これは、三度目のバブル崩壊に終わるのでしょうか。
今回も、中国特有の出来事が株高に拍車をかけました。7月6日、国営メディアが、株式投資を推奨する論説を突然掲載したのです。景気回復の勢いをつけるべく株高へ誘導したい、との政府の意向を表しているのでしょう。そうした思わくで、中国の株価指数は今月、約14%上昇しています(10日時点)。
よみがえるバブルの記憶
これをみると、2015年のバブルが想起されます。そのときも、国営メディアが投資推奨をさかんに行いました。それに乗じた個人投資家の投機に主導され、株価指数は、6か月で約2倍になりました。
当時、個人投資家の多くは、借入れ資金を株式に投じました(信用取引)。政策金利が引き下げられていたため、借入れの容易な環境だったのです。ただし、経済成長率は低下していました。そうした状況での株価急騰はやはりバブルであり、崩壊は時間の問題でした(事実、株価指数は1か月で約30%下落)。
「今回は違う」と言える多くの理由
ただし、その後、信用取引の規制が厳格化されました。その影響もあり、現在、個人投資家による信用取引の残高は、2015年のピーク時に比べ約半分です。そのため、当時ほどの過熱感はありません。
今回の株高は、実体経済面からも正当化し得ます。実際、コロナウイルスを制御した中国は、他国に先駆けて景気拡大期に入っています。今年の生産水準は、小幅ながらも昨年を上回る見通しです。この点、来年になっても「コロナ前」の生産水準を下回るとみられる、ほかの国々とは対照的です(図表2)。
相対的な割安感と投資家の行動
また、中国株は米国株に比べ割安です。足元、一株あたりの企業利益に対する株価(PER、倍数が小さいと割安)は、米国株が予想利益の約25倍、中国株が約16倍なのです(代表的な株価指数ベース)。
中国株の上昇を正当化する材料は、ほかにも挙げられます。昨年には、米企業(MSCI)が作成している新興国株指数において、中国株の配分比率が引き上げられました。この結果、同指数に連動した、もしくはそれを上回る運用実績を目指す機関投資家は、中国株投資を追加せざるを得なくなっています。
中国の優位性が鮮明に
さらには、コロナウイルスの制御にひとまず成功したこと自体が、投資家に安心感を与えています。北京などで再感染の動きも散見されますが、局地的な動きにすぎず、かつ、果断に封じ込めています。
このことは、コロナウイルスの感染が再拡大している米国と、明確な対照をなしています。要するに、何かと比較される米中ですが、景気の勢い、株価の上昇余地、健康危機への対応に関し、今は中国の優位が鮮明です。よって今回ばかりは、中国株の上昇傾向は、より安定的なものになる可能性があります。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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