ブラジルの三重苦:コロナウイルスを甘くみていないか?
脅威は去らず
金融市場は、もうコロナショック後を見据えています。しかし新型コロナウイルスの脅威は、全く過ぎ去っていません。それを理解し、気を引き締めるには、アジアや欧米以外にも視野を広げるべきです。
当初危惧されたのは、このウイルスが中国以外の新興国で大流行することでした。そういった国は、政府の統制力や医療の水準、被害者を支援するための経済力など、多くの点で不安があります。そのためそうした新興国で感染が広がれば、もはや収拾がつかなくなり、世界中に感染を再拡大しかねません。
感染の中心地はブラジルへ
南米の大国、ブラジルで、まさにその危惧が現実のものになっています。新型コロナウイルスによる新規の死亡者数において、今やブラジルは、累計死亡者数が世界一の米国にほぼ並んだのです(図表1)。
ブラジルでは、このウイルスによる最初の死亡者が出てから、75日以上が経過しました。この国が特異なのは、現在に至ってもなお、死亡者数の減る様子がみられないことです(多くの国では、50日前後で新規の死亡者数が減少傾向に)。ウイルスの抑止に関し、ブラジルは失敗したと言わざるを得ません。
大統領と州知事の対立
ブラジルでの感染拡大には、様々な理由が挙げられます。例えば、人口密度の高いファベーラ(スラム街)では、ソーシャルディスタンス(他人との距離)の確保などが、ほとんど不可能であることです。
ただ、そうした条件は、ほかの多くの新興国でも同様です。よって、ブラジル固有の理由としては、対策の混乱を挙げねばなりません。つまり、経済を優先しウイルスのリスクを軽視するボルソナロ大統領と、人命を優先し外出規制などに前向きな州知事との対立が、一貫したウイルス対策を妨げたのです。
不安が残る中、経済活動を再開
それでも、ブラジル最大の都市サンパウロなどの州知事は、大統領と衝突しながらも、厳しい外出規制を導入しました。4月上旬頃まではそれが総じて守られ、ウイルスの犠牲者も当初は抑制されました。
しかしブラジルは、米国と同じく連邦制ではあるものの、米国よりは中央集権的です。そのため、経済活動の再開を急ぐボルソナロ大統領の圧力に抵抗し切れず、現在、各州で工場の操業などが順次再開されています。また、大統領の態度に影響され、ソーシャルディスタンスを軽視する人も増えています。
三重苦の泥沼に
ブラジルでは失業者が急増しており、経済活動を再開せざるを得ない、との事情もあります。しかし、ウイルスを全く抑止できておらず、検査体制も不備である中での経済再開は、大きなリスクを伴います。
しかも大統領は、ウイルス対策の失敗などで、求心力を失っています。景気の急回復は見込みがたく、通貨価値も大幅下落です(図表2)。ブラジルは当分、人命被害・景気悪化・政治不信の三重苦から脱出できないでしょう。リーダーがコロナウイルスの脅威を甘くみたことが、この苦しみを招いたのです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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