緊急事態宣言へ:政治的に正当であり、金融市場も好感か
政治の本質的使命
人間や世界にとって最も重要なことは何か。それが明瞭になるのは、危機的な状況に追い込まれたときです。新型コロナウイルスの大流行という危機に立つ今、様々な面でそれを考えずにはいられません。
政治面について言えば、国民の生命、安全、生活を守ること、これが最重要の使命です。この当然のことを思い起こさせてくれたのが、コロナショックにほかなりません。そしてウイルスの感染が拡大した多くの国々で、基本的には、この使命に沿った政策が行われています(感染抑止策、生活補助策など)。
本当に重要なのは「生きるか死ぬか」の問題のみ
この危機対応に比べると、その他の政治的事象は、重要性において劣後します。つまりその大半は、権力を追求する人々の闘争にすぎません。あるいは、民衆から人気を得るためのパフォーマンスです。
昨年、世界を翻弄したのは、米中貿易摩擦や英国の欧州連合(EU)離脱でした。しかし歴史的な出来事にみえたそれらも、今にして思えば、米中の間や英国の中での、小さな衝突にすぎなかったと言えます。「生きるか死ぬか」のコロナショックに比べると、「退屈しのぎ」程度のイベントだったのです。
厳しい策はリーダーの支持率を高める
国民の生命を守ることが政治の使命であることは、人々も本能的にわかっています。多数の国でのロックダウン(都市間移動や外出の原則禁止など)がおおむね順守されているのは、このためでしょう。
ただ、ロックダウンで人の動きが激減し、特に米国の雇用が急激に悪化しています(図表1)。それでも、米国を含む各国において、まずは生命・健康を守ることが先決、という理解が共有されています。そのため、厳しい封じ込め策を導入した国の大統領や首相の支持率は、総じて上昇しています(図表2)。
生命か雇用か?
ただし、「生命の保全」と「雇用の安定」という二つの要請は、相反するものではありません。雇用悪化が続けば、生活苦で健康を損なう人も増えます。よって、健康を守るには雇用を守らねばなりません。
したがって、ロックダウンに伴って失業した人などに対し、政策的に手厚い支援を行うことが必要です。外的な原因で失業した人を救済することも、政治の本質的な使命であるからです。その点も広く認識されているため、所得補助や失業保険の拡充などに関し、正面から反対する人は米国でも少数です。
金融市場もおそらく好感
遅ればせながら、日本でも4月7日、7都府県を対象とする緊急事態宣言が出そうです(ただ、外出は「禁止」でなく「自粛」にとどまりそう)。国民を守るという政治の使命に照らせば、正当な措置です。
安倍政権への支持・不支持を超え、多くの国民もこの措置を歓迎するはずです。同時に、営業停止などで困窮する中小企業などに対し、力強い支援策も欠かせません。「感染拡大の抑止」と「困窮者の救済」のセットは、今や世界の標準です。それらが果断に実行されれば、金融市場でも好感されるでしょう。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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