コロナウイルスとの戦い:「自由と分断の国」である米国の場合

2020/03/31 <>

「自由の国」の外出禁止令

新型コロナウイルスが最も流行しているのは、今や米国です(図表1)。この世界一の経済大国は、コロナショックに打ち勝てるのか。その行方は世界経済の運命を決する、と言っても過言ではありません。

ウイルス発生地の中国では、厳格な外出制限などが成功しました。問題は、「自由の国」である米国でもそのような措置が可能なのか、です。とはいえ、ニューヨーク州などで出された外出禁止令は、総じて守られている模様です(反発する人も散見されますが)。米国人の規律意識は、決して低くありません。

雇用危機の瀬戸際に

ただし、そうした措置による景気への悪影響が、鮮明に表れてきました。特に目立つのは、宿泊、飲食、小売、輸送など外出制限の影響を直接的に受ける業種で、失業する人が急激に増えていることです。

これまで米景気の拡大を支えてきたのは、良好な雇用環境と、それに伴う堅調な個人消費です。それらが悪化し続ければ、米国、ひいては世界の経済に、多大な打撃を与えます。そして、ひとたび失われた雇用が元に戻るには、相当な時間を要します。そういった事態を回避する対策が、強く求められます。

超大型の経済対策を評価

この点、3月27日に成立した対策には、高い評価を与えるべきです(実際、それに対する期待で米国株などは一旦大幅に上昇)。その規模は国内総生産(GDP)比で約10%と、過去最大の経済対策です。

内容は、企業や医療機関、家計をサポートする、包括的なものです。企業や病院に向けては、倒産や医療の混乱を最小限に抑えるため、潤沢な融資や手厚い補助金給付などを実施します。家計に関しては、所得を支えるべく、大人一人あたり最大1,200ドルの直接給付や、失業保険の拡充などが講じられます。

党派対立を越え、迅速に合意形成

注目すべきは、この経済対策の規模や内容に加え、それが迅速に成立したことです。「トランプ大統領・共和党vs民主党」の対立が日常化した米国政治ですが、本件では、危機対応が最優先とされたのです。

この対策には、航空業界などの大企業が恩恵を受けやすい、といった問題もあります。それでも迅速に成立したのは、コロナショックの場合、大企業にも直接の責任はないためです。その意味で、金融機関の責任が問われた2008年の金融危機時に比べ、今回は党派間の合意を形成しやすい、と言えます。

米国も危機時には団結

危機感が強まる中(図表2)、トランプ氏の支持率は、大統領就任以来で最高となっています。リーダーがどんな人物であれ、危機時にはその人物のもとで団結すべき、と考える人が増えているのでしょう。

米国は、行き過ぎた自由や所得格差による国民の分断で、衰退していくのが必然、と思われました。しかしこの国は、2001年の同時多発テロ時にもみられたように、窮地に陥った局面でこそ力強く立ち上がります。強力な経済対策などに支えられ、コロナウイルスとの戦いにも、必ず勝利するはずです。

 

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

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