ウイルス問題の所在:困難な状況だが、絶望してはならない

2020/03/24

第一の危機から第二の危機へ?

新型コロナウイルス(以下「ウイルス」)に伴う問題の解決は、困難を極めます。しかし、解決不可能な問題ではありません。よって、絶望すべき状況ではなく、大切なのは問題の所在を把握することです。

言うまでもなく、これは第一に健康・生命の危機です。これを抑えるためには、外出・移動やイベントの制限、オフィスや工場、店舗の稼働・営業制限などが不可欠です。これらは各種サービスの需要と供給を減らすため、第二の危機、つまり経済危機(企業倒産や失業の急増など)をもたらしかねません。

第一の危機(健康・生命の危機)は欧米が舞台に

このように第一の危機への対策自体が第二の危機をもたらしかねない点に、問題の難しさがあります。特に現在懸念されるのは、イタリア、スペイン、米国など、感染者が急増した欧米諸国です(図表1)。

一方、中国では、都市封鎖や外出制限の導入後3週間程度で感染が減少しました。それを踏まえると、類似の措置が導入された欧州諸国でも、来月前半には感染の著減が期待できます。中でもイタリアにおいて衛生観念が高まっているのは、歓迎すべき動きです(図表2。ただ、マスクの効果には諸説あり)。

第二の危機(経済・金融の危機)をいかにして防ぐか?

ウイルスに効く治療薬やワクチンの開発も進んでいるので、被害はいずれ収束するはずです。しかし、そのように落ち着く前に経済・金融危機が引き起こされる、というシナリオは、まだ排除できません。

そうした第二の危機を抑えるには、各国の政府・中央銀行が、金融市場・企業・家計を支える強力な策を講じねばなりません。急務なのは、融資支援や補助金給付などにより、企業の倒産や家計の破たんを防ぐことです。弱い企業はつぶれてよい、という冷たい資本主義の論理は、この際、無視すべきです。

金融危機ではない以上、最近の市場変動は不合理

心強いことに、日米欧は、大胆な策を矢継ぎ早に講じています。金融政策が中心ですが(中央銀行による資産購入、企業の資金繰り支援など)、今後、財政政策も総動員されそうです(産業補助金など)。

金融政策も寄与し、企業・金融機関の倒産、金融商品の債務不履行に関し、極端な増加は示されていません。2008年のリーマンショック時とは異なり、今は金融危機の状況ではないのです。それでも金融市場の動きは凄まじく、米国株などは1か月で約30%も下落しました。市場は冷静さを失ったのです。

ウイルスによるショックは、おそらく短期的なもの

ウイルスを理由とした一方的な株安は、理屈にも反しています。株式には満期がないので、株価を形成するのは短期の企業利益ではなく、長期間の利益であるからです(よって倒産しないことが最重要)。

たしかに、このウイルス問題は厄介です。世界景気が一時落ち込むことも確実です。ただしこれらは、おそらく今年の夏までに最悪期を脱する、短期的な問題だと考えられます。そして、超緩和的な金融環境などにも後押しされ、年後半には力強い景気・株価の回復が十分あり得る、と期待してよいでしょう。

 

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

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