アベノミクスの現実:夢は破れ、試練の局面に
GDPショック
夢から覚め、厳しい現実に向き合った人は、しばし無力感に襲われます。日本経済は今、そのような状態です。アベノミクスで大復活、という夢が破れ、出口なき低成長という現実に直面しているのです。
まだ夢の中にいた人を叩き起こしたのは、昨年10-12月期の国内総生産(GDP、2月17日発表)です。これが実質で前期比1.6%減(年率6.3%減)と、2014年4-6月期以来の大幅な落ち込みを記録したのです(図表1)。2014年も今回も、マイナス成長をもたらしたのは、もちろん消費税増税です。
増税の破壊力は衰えず
今回の増税では、食品の軽減税率など多くの緩和措置が講じられました。にもかかわらず大幅なマイナス成長となったのです。増税の衝撃は予想(筆者の予想も含む)以上だった、と認めざるを得ません。
消費減に関し、10月の台風の影響も指摘されています。ただ、そうだとすればサービス部門が落ち込むはずですが、実際は小幅な減少です(図表2)。一方、落ち込みが顕著なのは、増税の影響を特に受ける耐久財です。この傾向は前回増税時と似ていることからも、消費減の主要因は増税だと言い切れます。
設備投資にもブレーキ
増税による影響は、設備投資にも鮮明に表れました(10-12月期に前期比3.7%減)。増税に備えた投資(例えば、ポイント還元を受けられるキャッシュレス決済向けの端末導入)の反動減などのためです。
日本経済は、なぜ、わずか2%の増税であっさりマイナス成長に陥ってしまうのでしょうか。消費については、実質所得が減少し多くの家計が疲弊している点を挙げねばなりません。設備投資については、人口減などを踏まえると将来の成長期待が持てないため、企業の投資意欲が高まらないのでしょうか。
リセッション入りか
マイナス成長の要因として、世界景気の減速を挙げるのは的外れです。例えば世界景気の影響をより強く受ける韓国では、10-12月期のGDPが前期比年率4.7%増と、日本とは逆に高成長をとげたのです。
ただし、今年1-3月期に限れば、外部要因を強調することが許されます。新型コロナウイルスの拡大に伴い、中国景気の急減速が避けがたいからです。これによる訪日旅行者の減少や、中国向けの輸出減などの結果、日本はリセッション(2四半期以上連続したマイナス成長)に陥る可能性が高いでしょう。
小手先の政策は無効
しかし高齢化や競争力低下など、日本の構造問題から目をそらすことは許されません。また、「財政支出→赤字拡大→増税→景気悪化→財政支出→…」の悪循環を招く財政政策には、期待してはなりません。
とはいえ、財政支出や金融緩和で日本経済が劇的に復活する、と本気で信じる人は、もうほとんどいません。そんな小手先の策では何の解決にもならない、ということを実証したのが、アベノミクスだったのです。この現実に目覚め、無力感の漂う日本は、どん底から這い上がることができるのでしょうか。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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