恐怖のウイルス降臨?:新型肺炎について、いま言えること

2020/02/04

コロナウイルスによる新型肺炎に関し危惧されるのは、何より生命や健康、自由への影響です。そうした当然のことを踏まえた上で、一般的な投資家の疑問に現時点で答えるとすれば、以下のとおりです。

Q1.金融市場の反応は?

A1.感染者の99%が住む中国の景気減速懸念から、世界の株価が下落し(図表1)、長期金利が低下し、円高が進行しました。アジア株のほか、米国株なども急落する場面がみられます。米国株は昨年大きく上昇したため、もともと割高感があったためです。ただ、投資家の多くはパニックに陥ったというよりも、先行きが読めない中、とりあえず保有資産を整理している、といった状況です。

Q2.中国経済への影響は?

A2.短期的には、中国経済は急失速しそうです。この1-3月期、中国の経済成長率は従来、前年比6%程度の見込みでしたが、ウイルス発生地とみられる武漢市やその周辺での移動制限や工場の操業停止などを受け、4~5%程度への減速が見込まれます。ただしこれは、感染がいつまで続き、移動や生産などの制限がどれだけ続くのか、などによるため、現時点では大まかな推測の域を出ません。  

Q3.過去の経験はどうだったか?

A3.中国発かつ似た肺炎である「SARS」流行時も中国経済は一時減速しましたが、終息とともに回復しました(図表2)。一旦急落した香港株は、SARS終息前に上昇へ転じました。世界経済への影響は、特段目立ちませんでした。今回の中国でも、ウイルス感染が制御されるにつれ消費や生産の反動増が見込まれる上、金融や財政を用いた対策が4-6月期以降の景気回復を促す見通しです。

Q4.世界経済への影響は軽微なのか?

A4.必ずしも軽微とは言えません。中国の名目GDP(国内総生産)は、SARS流行時に比べ約8倍に拡大し、世界のGDPに占める比率は約4倍になっています。そのため今回は、中国景気が減速すれば世界経済も無傷ではいられません。そうした影響は、中国人による海外旅行の減少、中国に拠点を置く多国籍企業の店舗や工場の営業・操業の一時停止、といった形によりもたらされます。

Q5.投資家の取るべき行動は?

A5.これを機会に資産構成を再点検したいところです。世界株は昨年上昇し過ぎたので、大きな相場変動は今後も起こり得ます。よって、株式に偏っている場合は構成比率の修正が必要かもしれません。例えば、金利低下などが寄与し底堅さを保っているJリートの比率を高めることが、一案です(ホテルは中国人観光客減の影響を受けるものの、上場リート64銘柄中、ホテル主体型は6銘柄)。 

Q6.そのほかに注意すべきことは?

A6.新型肺炎は世界の終末を招くものではありません。それによる死者数は現時点で400人を超えていますが、世界で年間約40万人もの死者を出すインフルエンザの方が、よほど現実的なリスクです。また、中国の政府や住民は感染防止に全力で取り組んでおり、感染拡大ペースは今月か来月には鈍る可能性が高そうです。予防は必要ですが、中国の人への不当な差別などは厳に慎むべきです。

 

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

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