東南アジア取材報告④:マレーシアは偏見や通念を打ち破る

2020/01/28

「異民族の共存は不可能」は、誤り

マレーシアについては、鮮烈なイメージが浮かばないかもしれません。これは、同国にとり不名誉なことではありません。突出し過ぎた部分が少なくバランスのとれている点が、この国の長所だからです。

優れたバランス感覚を表すのが、多民族の共存です。多数派は人口の6割超を占めるマレー系ですが、約2割の中国系、1割未満のインド系なども存在し、現在、深刻な対立は特段みられません。異民族の共存は無理、という世界中の右派が持つ固定観念に対し、マレーシアは明確な反証を示しているのです。

「イスラム教は非寛容で攻撃的」は、偏見

国教は、主にマレー系民族が信仰するイスラム教です。中世のアラブ商人が、この一神教を伝えたのです。ただし信教の自由が認められ、仏教、ヒンドゥー教、キリスト教なども平和的に共存しています。

一部の過激派によるテロのため、イスラム教は攻撃的、との偏見が世界には存在します。しかし経典『コーラン』には、異教徒との共存を説く箇所もあります。それに則った本来の穏健なイスラム教が、マレーシアで実現しているのです。他国から来た人が宗教上の不都合を感じることも、まずありません。

「マレーシアは輸出に依存」は、誇張

マレーシアのイスラム教徒は戒律(禁酒など)を順守していますが、人生の基本的な楽しみ方は、非イスラム教徒と大差ありません。例えば、人々は買い物を大いに楽しみ、服装や料理にも凝っています。

現在の景気も、旺盛な消費意欲に支えられています。マレーシアの国内総生産(GDP)に占める消費は6割弱と、日本並みに高く(日本も実は消費中心。図表1)、輸出のみに頼っていないのです。米中貿易摩擦などのため輸出は確かに不調ですが、それだけで景気が後退するとの認識は正しくありません。

「原子化した(ばらばらの)個人」を前提とする理論は、不適合

ただ、買い物を楽しむあまり、貯蓄率は下がっています。公的な年金・医療保険も、老後や病気のリスクをカバーするには不十分です。にもかかわらず、マレーシア人の多くは将来に対して楽観的です。

背景には、家族や親族で助け合うことを当然視する文化があります。西洋流の個人主義とは一線を画す半面、「国」にも頼り過ぎていないのです。このような文化は、ほかのアジア諸国でも広くみられます。よって、孤立した個人と国の政策を軸に分析を行う主流派経済学では、アジアの現実を把握できません。

「中進国の罠(先進国になれず停滞する)」は、根拠薄弱

「中進国(中所得国)の罠」という概念も、アジア諸国に対し単純に適用すべきではありません。事実、それに陥ると思われた韓国や台湾は、中進国のまま停滞するどころか、今や日本並みの先進国です。

マレーシアの場合、中位年齢が29歳程度という若い国です。一人あたりの実質国内総生産(GDP)も、年3%以上の増加が続いています(日本は1%前後)。マレーシアは、様々な固定観念、偏見、通念を覆してきました。「中進国の罠」という根拠の弱い理論に関しても、必ずや打ち破ってくれるでしょう。

 

図表入りのレポートはこちら

http://www.skam.co.jp/newest_report/contents_type=8&type=topics

 

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
しんきん投信「トピックス」   しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融市場の注目材料を取り上げつつ、表面的な現象の底流にある世界経済の構造変化を多角的にとらえ、これを分かりやすく記述します。
<本資料に関してご留意していただきたい事項>
※本資料は、ご投資家の皆さまに投資判断の参考となる情報の提供を目的として、しんきんアセットマネジメント投信株式会社が作成した資料であり、投資勧誘を目的として作成したもの、または、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
※本資料の内容に基づいて取られた行動の結果については、当社は責任を負いません。
※本資料は、信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。また、いかなるデータも過去のものであり、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。
※本資料の内容は、当社の見解を示しているに過ぎず、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。記載内容は作成時点のものですので、予告なく変更する場合があります。
※本資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。当社の承認無く複製または第三者への開示を行うことを固く禁じます。
※本資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第338号
加入協会/一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会