東南アジア取材報告③:シンガポールは未来に向かって走る

2020/01/20 <>

小さな国の巨大な存在感

過去にしがみついている人は、東南アジアは日本よりも格下、と思っています。しかしそんな人も、シンガポールは別格、と認めるはずです。この国が先進的であることは、覆い隠しようがないからです。

シンガポールは、人口が日本の20分の1以下という小さな国です。しかし一人あたりの経済規模では、日本を追い越しました(図表1)。東西文明の懸け橋としての存在感も、日本をしのいでいます。それが可能なのは、中国系民族が中心でありながら、言語などは旧宗主国・英国の影響下にあるためです。

「ミニ中国」の成功という現実

ただ、シンガポールの成功は、欧米流のリベラリズム(自由主義)に対し、不都合な現実を突きつけます。つまりこの国の発展は、言論や集会の自由を制限し、全体主義的に国家を運営した結果なのです。

リベラル派の多くは、欧米式の民主政を採用しなければ先進国になれない、と信じています。そして、経済はおおむね自由、政治活動は不自由、という矛盾した中国式の体制は持続不可能、と主張します。ところが「ミニ中国」と言えるシンガポールは、そうした体制で現に平和と繁栄を築いているのです。

香港のデモに対する微妙な立場

興味深いのは、香港の反体制デモに対する姿勢です。シンガポールと香港は様々な点で似ており、純粋な民主政でない点もその一つです。そのためシンガポール人は、香港の動きを非常に注視しています。

香港に関し、欧米などでは「民主派が正義」という論調です。他方、シンガポールでは「デモが秩序を乱している」という論調なのです。特に政府は、反体制デモが自国に波及することを恐れています(ただ、シンガポールでは住宅政策などが成功しているため、社会への不満からデモが起こる可能性は低い)。

アジアの誇る偉人、リー・クアンユー初代首相

シンガポールを知るには、「建国の父」リー・クアンユー氏を知らねばなりません(ただし、同氏の自伝は、この地を一時占領した日本軍の極悪ぶりを描いているので、事実から目を背けたい人には不向き)。

同氏は、卓越した知力と指導力でシンガポールの基礎を築き、発展させた、戦後アジアの代表的人物です。たしかに、大衆迎合主義に陥りやすい民主政の欠点を認識し、強権的な手法も用いました。しかし公平無私で、情熱あふれる人物であったことは間違いなく、冷徹な独裁者というイメージは誤りです。

弱点を見据え、それを前向きな力に

今のシンガポールの繁栄、勤勉な国民性、汚職の少なさは、リー・クアンユー氏の遺産です。そして、生前の同氏がそうだったように、人々は自国の弱点を常に見据え、それを前向きな力に変えています。

すなわち、資源を欠く小さな国である以上、人の交流や貿易、新技術の導入に関しオープンな国になるしかない、というのが国民共通の決意です。また、歴史の浅い国だからこそ、未来に向けて走り続けるしかありません。昔の思い出にふける保守的な国がシンガポールに追い越されたのは、全く当然です。

 

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

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