東南アジア取材報告①:喜ばしき「アジアの時代」

2019/12/18 <>

日本もアジア

東南アジアや中国へ行くと、希望や元気が与えられます。国が年々発展し、人々が豊かになっていく様子を、目の当たりにすることができるからです。こうした感覚は、日本や欧米ではもう味わえません。

さらに日本人の場合、同時にアジア人だと再自覚させられます。アジアの定義は様々ですが、少なくとも中国・日本・韓国・東南アジアは、人種や気質、文化の類似性から、ひとまとめにできます。シンガポール、タイ、マレーシアを今月往訪した筆者が感じたのも、日本と似ているがゆえの心地良さです。

欧米vsアジア

世界情勢は今、「米国vs中国」という構図で論じられています。これは「衰退する欧米vs躍進するアジア」または「欧米の価値観vsアジア的なもの」という、もっと大きな枠組み内に位置づけるべきです。

アジア的なものとは何か。典型的な気質としては、穏やかで従順なことです。組織では、個人よりも集団秩序が優先されます。こうした気質や体制は、権威主義的(上位者に弱い)、非民主的、前近代的だと欧米メディアなどは蔑視しますが、そのように見下すのは、アジアの特性に関する無知に由来します。

アジア的な政治

例えばシンガポールでは、事実上の一党独裁が行われ、報道やデモは厳しく制限されています。監視カメラも多数設置されています。これらのため、この都市国家は「明るい北朝鮮」と呼ばれたりします。

タイでは、軍部や国王が大きな権力を持っています。今年3月に総選挙が行われましたが、発足したのは親軍部の政権です。マレーシアでは、多数派民族であるマレー系の国民が就職などで優遇され、少数派の中華系やインド系は、より厳しい競争にさらされます。民族による差別だと言わざるを得ません。

アジアは平和

そうした政治は、欧米の言う「真の民主主義」には程遠いものです。しかしこの三か国では、社会秩序はおおむね保たれ、特にシンガポールの治安は東京以上です。これを批判される筋合いはありません。

欧米式の民主政でなくとも、国民の幸福を増進することは可能なのです。シンガポールの政権安定は、割安な公共住宅の供給などに対する国民の支持も寄与しています。タイの現政権が優先するのも、低所得層への支援です。マレーシアの多数派優遇策については、秩序保全上の必要悪なのかもしれません。

アジアの時代へ

ここで想起すべきは、シンガポールの初代首相リー・クアンユー氏(1923-2015年)とマレーシアの現首相マハティール氏(1925年-)です。両氏に共通するのは、傲慢で退廃した欧米への反発心です。

アジアの発展は、彼らのような偉人と人々の奮闘の成果です。すでにアジアは、経済規模(中国・日本・韓国・東南アジアの合計)で米国やユーロ圏を超えました。中国や東南アジアはまだまだ伸びるので、米国などとの差は広がる一方でしょう。そう思うと、アジア人の一人として、深い感慨を覚えます。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

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