香港の不幸、日本の幸運:反体制デモの世界的ブームの中で

2019/11/26 <>

抜群の安定感

安倍首相の在任期間が歴代最長(通算2887日)に達したのは、「幸運」による面もあります。実際、功績とされる円安・株高も、欧州債務危機の緩和(2012年後半~)という追い風を受けたものでした。

いずれにせよ他国の首相や大統領は、日本の安定をうらやましく思っているはずです。反体制デモ(抗議運動)が頻発するなど、多くの国の政治は極めて不安定だからです。それだけに、政治の安定は日本株などの好材料です。ただ、日本市場は海外の影響を受けやすいので、他国に無関心ではいられません。

デモの背景にあるもの

注目度が高いのは香港です。そのデモの規模は6月に比べ縮小しましたが、一部が暴徒化したのは残念です。背景には住宅価格の高騰(図表1)などへの若年層の不満があるため、事態収束は遠そうです。

しかし24日には区議会選挙(小選挙区制)が無事に行われ、香港の成熟度を印象づけました。結果は、約8割の議席を獲得した民主派の勝利です。ただし得票率では民主派が約6割、現体制派が4割弱なので、民主派圧勝とは言い切れません。民主派と現体制派の対立は、今後も香港を悩ませるでしょう。

はるかに激しいデモの数々

香港の反体制デモでは、2人の死者が出てしまいました。ただ、世界中で起こっているデモの中では、香港の場合は驚くほど冷静です。にもかかわらず香港ばかりを大きく報じるのは、偏った報道姿勢です。

南米では、死者が数十人に達する激しいデモが複数の国で生じています。中でも、ボリビアでは前大統領派と暫定政権派が衝突し、内戦前夜のような情勢です。また、「南米の優等生」と米欧に持てはやされてきたチリでは、新自由主義的な経済が富と権力の集中をもたらし、人々の怒りが爆発しています。

新興国だけではない

中東・アフリカに目を転じると、イラン、イラク、レバノン、アルジェリアなどで、生活難や政治腐敗などを背景に、反体制デモが多発しています。イランやイラクでは、死者が100人を超えた模様です。

欧州のいわゆる先進国も、平穏ではありません。スペインではカタルーニャ州の独立を目指す勢力、英国では環境保護団体による、やや過激な大規模デモが展開されています。興味深いのは、それらが香港のデモに触発され、大義名分(民主主義など)や戦術(交通機関の妨害など)を真似ていることです。

静かな国、日本

世界中の反体制デモは、一過性の現象ではないと覚悟すべきです。デモの激化は、所得格差への不満などに加え、新技術の普及も一因だからです(特に、スマホによるデモ参加者同士の情報交換が容易に)。

ただし、日本では反政府デモが起こりにくいでしょう。ほとんどの場合、デモの主体は血気盛んな若年層ですが、日本は高齢化が著しいからです(図表2)。人口減のため、住宅難や就職難といった問題も比較的軽微と言えます。政権の安定という点では、高齢化・人口減も、実は幸運なことかもしれません。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

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