米中が一時休戦:不幸の連鎖は断ち切れず

2019/10/15

世界経済への不安

将来への不安は、主に取り越し苦労から生まれます。連想が連想を呼び、悪い方向へ際限なく想像が膨らんでいくのです。最近の金融市場を覆っているのは、そのような連想による世界経済への不安です。

連想の起点にあるのは、米中の貿易摩擦です。この点、先週11日までの協議を受け、中国製品の関税引上げ(当初予定では15日から)は一旦棚上げとなりました。これは朗報ですが、一時的な「休戦」にすぎません。既存の関税や12月に発動予定の追加関税の扱いなどに関しては、今後の協議次第です。

関税の応酬から貿易の鈍化へ

よって当面、心の平安が訪れることはなさそうです。警戒されているのは「関税の応酬→世界貿易の不調→製造業の業況悪化→非製造業への波及→雇用・所得・消費の減少」といった、不幸の連鎖です。

この単純な連想は、理屈上は間違っていません。関税とは、貿易の際に上乗せされる余分なコストです。それが貿易の足を引っ張るのは、当然のことです。実際にも、米中が関税の応酬を開始した昨年以降、世界貿易の鈍化は明らかです(図表1。ただし、中国の構造変化など、関税合戦以外の要因も影響)。

貿易の鈍化から製造業不況へ

財(有形物)の貿易鈍化は、製造業を直撃します。しかも製造業は、国際分業によって緊密に結び付いています。そのためこの部門については、米国を含め(図表2)、すでに世界同時不況に近い状況です。

トランプ米政権が関税攻勢を始めた大きな名目の一つは、米国の製造業を守る、というものでした。ところが実際には、その製造業が(中国による報復関税で苦しむ農業とともに)、最も貿易摩擦の打撃を受けているのです。そうした現実を踏まえれば、今般の米中休戦は、遅かったとはいえ正しい措置です。

製造業不況からサービス業不況へ(?)

ただし主要国では、製造業のシェアが低下しています(米国では、国内総生産(GDP)のうち製造業の比率は約11%)。しかし製造業が基本だという「ものづくり信仰」は、日本以外でも残っています。

そのため、製造業の不況は景気マインド全般に影を落とします。実体的にも、様々な波及経路が考えられます(例えば、製造業企業・従業員が利用するサービス(広義では小売、情報通信、金融等々)への需要減)。事実、サービス業または非製造業の景況感は、米国でも悪化の兆しが出始めました(図表2)。

そして世界景気後退へ(?)

このような状況が続くと雇用も圧迫され、これに伴い、所得や消費も鈍化あるいは減少するはずです。そして世界全体のGDP成長率が2%を下回る事態になれば、世界景気の後退と言ってよいでしょう。

現在はその段階ではなく、主要国の雇用や消費はまだ堅調です。世界の成長率については、今年・来年とも2%台半ば以上が見込まれます。ただ、その前提は米中の対立が再度激化しないことです。その保証が得られない以上、世界経済への不安は単なる取り越し苦労(過度の心配)だとは言い切れません。

図表入りのレポートはこちら

http://www.skam.co.jp/newest_report/contents_type=8&type=topics

 

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