消費税増税と日本人の国民性:今度こそ失敗を直視できるか?

2019/09/17

あまりにも日本的

日本人に国民性というものがあるとすれば、それは「ムードに染まりやすいこと」です。また、「過去の過ちを直視し是正するのが得意でないこと」や「言霊(ことだま)信仰が強いこと」も挙げられます。

これらを発揮したのが、前回の消費税増税(2014年)直前です。その前の増税(1997年)で景気が落ち込んだのを軽視し、楽観ムードに染まったのです。いわゆる識者も「増税の影響は軽微」と呪文のように唱えました。ポジティブな言霊(言葉のパワー)が景気懸念を吹っ飛ばす、と信じたのでしょう。

呪文は効かず

しかし、呪文は効きませんでした。前回の増税は、リーマンショックや東日本大震災を超える衝撃を消費に与えたのです(図表1)。楽観ムードを主導した人々や主要メディアは、完全に間違っていました。

そうした過ちへの反省は、あまりみられません。とはいえ政府などは、増税の威力を思い知りました。そのため追加の増税は二度延期され、ついに決まった今回の増税(10月から)では、多くの家計支援策が用意されています(食品のほか、なぜか新聞の軽減税率、キャッシュレス決済でのポイント還元など)。

今回はどうか?

そうした措置もあり、今回は、前回よりは「増税の影響は軽微」かもしれません。今回は、前回に比べて増税前の駆け込み購入が少ない模様であることも、反動による消費減を抑制する可能性があります。

問題は、なぜ駆け込み購入が少ないのか、です。実質賃金の減少などで節約志向が強まり、多くの人は駆け込み購入を行う余裕すらないのでしょうか。あるいは、増税後に売上げが落ちれば、店舗は値下げに踏み切るはずだ、と予想しているのでしょうか。おそらく、これら両方が関係しているのでしょう。

耐え忍ぶ日本国民

日本国民は、増税は仕方のないことだと諦めているようです。世論調査(一部を除く)では、消費税増税に「反対」が「賛成」を上回っているものの、増税反対デモが激化しているわけではありません。

諦めの背後にあるのは、高齢化社会を支えるには財政再建が必要、との認識です。事実、日本の財政は危うい状態にあります(図表2)。財政赤字は無限に増やせるといった主張もみられますが、これは暴論です。そんな財政は信用を失い、国債暴落(=金利急上昇)や極端な円安(→インフレ)を招きます。

先送りの代償

前回よりは軽微と言っても、賃金の大幅増などが起こらない限り、今回も増税の影響は長く残るでしょう。軽減税率以外の家計支援策の多くは期間限定である一方、税率が下がることはまずないのです。

バブル崩壊後の日本は、高齢化対策などを先送りしつつ、主に財政出動で景気を支えました。それらの結果が政府債務の膨張、そして増税です。アベノミクスの掛け声もムードを一時変えただけで、生産性や財政は特段改善しませんでした。増税を機に直視すべきは、過去数十年にわたる、日本の失敗です。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

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