欧州取材報告④:ドイツのどこが素晴らしいのか?
ヒューマニズムの旗手として
国や民族に本質的な優劣をつけるのは、極めて愚かなことです。とはいえ人類への貢献という点で、ひときわ輝いている国々はたしかに実在します。その中で、いま最も注目すべき国、それがドイツです。
ドイツ産業の卓越性は、誰もが知っています。しかしドイツの真の偉大さは、この国が生み出してきた深遠な哲学と崇高な芸術にあります。それらを貫くのは、キリスト教的なヒューマニズムです。そうした価値観が米国などで崩壊しつつある現在だからこそ、これを実直に保つドイツに期待が集まります。
政治の安定、環境の保護
政治でも混乱する米国などに対し、ドイツの安定感は際立っています。その象徴が、14年近く首相を務めてきたメルケル氏です。ただ、再来年の任期満了を前に、同氏の求心力には少し陰りがみられます。
とはいえメルケル首相の中道路線自体は、いまも支持を得ています。日本でよく報じられる「極右」の台頭は、実際には例外的な動きにすぎません。むしろドイツでいま一番勢いがある勢力は、「緑の党」です。よってドイツは、穏健な政治や環境保護という面で、欧州そして世界をリードし続けるでしょう。
ブランドを支える哲学と美学
景気については、いま減速中です。ドイツ経済は、ほかの先進国に比べ輸出や製造業が高い比率を占めます。そのため現在のように米中の対立などで世界貿易が鈍化すると、打撃を受けざるを得ません。
しかし、ドイツの製造業が没落するとは考えられません。各社には確固たる哲学と美学があり、それこそが「ドイツブランド」の源泉だからです。これは、他国が真似できるものではありません。「より良く、より美しいもの」を欲するのが人間である以上、ドイツの工業製品への需要は絶えないはずです。
ゆとりのある生き方と働き方
ヒューマニズムに基づく哲学や美学は、ドイツの街からも感じられます(写真1,2)。余裕のある道路などは、自動車だけでなく歩行者や自転車にも快適です。整然と並ぶ建物は、シンプルかつ小綺麗です。
そうした環境から生まれるのは、ゆとりのある人生です。例えばドイツ人は、労働時間の短さで有名です(図表1)。所定の時間内で合理的に仕事をこなす、との考え方が浸透しているからです。と言っても、店員などの応対が事務的だという印象は受けません。逆に、過剰なほど親切な人が多いと言えます。
堕落からの救済
ただし、ドイツのヒューマニズムは「人間至上主義」とは違います。ドイツ人は環境保護のほか動物の権利尊重にも熱心です。仏教的な「万物との共生」においても、ドイツは日本より進んでいるのです。
むろん、この世に天国はありません。ドイツの豊かさの裏にも、所得格差の拡大などが潜んでいます。また、自らを「選ばれた民族」と誤認した一時期のドイツ人は、超国粋主義に堕しました。しかしドイツは、そのような愚かさを直視し、悔悟し、真善美を愛する人々に安息を与える存在へ昇華したのです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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