欧州取材報告③:ECBへの小さな期待と大きな懐疑

2019/08/01

米国に続きユーロ圏も金融緩和か

金融市場の話題が尽きてきたとき、必ず前景に現れるテーマが「主要国の金融政策」です。これが一番手っ取り早い材料だからです。6月以降の世界株を支えたのも、主に米欧の金融緩和への期待です。

実際に米国では、7月末に利下げが決まりました。ユーロ圏でも、欧州中央銀行(ECB、写真1)が9月に利下げなどに踏み切ると予想されます。ユーロ圏は現在、特に製造業が不調です(一方、サービス業などは底堅く推移)。しかもインフレ率は低下しているので、金融緩和自体は不自然と言えません。

高揚感なき緩和期待

そうした見方は、7月に筆者が訪れた英国やドイツなどでも一般的です。ドイツは金融緩和に慎重とされますが、デフレ(日本が経験したような)を避けるには早めの緩和が必要、と言う人もいるのです。

ただ、ECBへの緩和期待による高揚感は、あまり感じられませんでした。それは第一に、追加的な政策手段が乏しいからです。すでに政策金利は超低水準にあるので、利下げ余地はごくわずかです。ユーロ圏の国債や社債を買い入れる策もありますが、これには市場機能をゆがめるなどの問題があります。

手段も効果も緊急性も乏しい

第二に、緩和を行っても景気押上げ効果はほとんど見込めません。製造業の不調は世界的な貿易摩擦などが原因であって、高金利による資金調達難のためではないからです(むしろ軒並み低金利、図表1)。

第三に、現在のユーロ圏は危機には程遠く、極端な金融緩和は不要です。欧州で多くの人が挙げるリスクの一つはイタリアの財政不安ですが、同国の国債利回りも、信用危機を示唆する水準ではありません。ギリシャのユーロ離脱懸念などが真顔で論じられた欧州債務危機時とは、状況が全く異なるのです。

ドラギ・マジックは不発

欧州債務危機の渦中にあった2012年夏、ECBを率いるドラギ総裁は、「ユーロを守るために何でもする」旨を力強く宣言しました(重債務国の国債を無制限に買い入れ、利回りを抑えることなどを想定)。

これを受けて金融市場のパニックは収まり、ユーロ崩壊論も下火となりました。そのためドラギ氏に「ユーロの救世主」という評価を与える人が、欧州では意外なほど多いのです。しかし今は金融緩和の手段も緊急性も乏しい以上、市場の流れを一変させる「ドラギ・マジック」再現とはならないでしょう。

ラガルド氏は本当に緩和方向へ突き進むのか?

ドラギ総裁は、10月末で退任します。そして次期総裁には、IMF(国際通貨基金)のラガルド氏が指名されました。同氏は金融政策の運営経験がないため、この指名は欧州でも非常に驚かれていました。

政策方向としては、ラガルド氏は緩和路線を引き継ぐ、とみる人が現地でも多数です。しかし同氏はバランス感覚に優れた人なので、金融緩和への慎重論にも耳を傾けるはずです。そういったことも踏まえると、ECBの金融緩和というテーマは、秋以降には後景へ退いていく可能性が高いと思われます。

図表入りのレポートはこちら

http://www.skam.co.jp/newest_report/contents_type=8&type=topics

 

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