欧州議会選挙:「不幸の予言」を裏切るEUとユーロの底力

2019/05/28

特異な欧州政治

欧州の政治を論じる場合、なぜかネガティブなトーンが好まれます。欧州連合(EU)懐疑派や極右(国粋主義)の躍進により、EUやユーロは危機に瀕する、といった「不幸の予言」も長年存在します。

ただ、欧州議会選挙(5月23日~26日、図表1)については、通常の国政選挙とは異なる解釈の仕方が求められます。EUは国ではなく、主権の大部分は加盟各国(EU離脱を延期している英国を含む、現28か国)にあるからです。またEUの組織構造は変則的で、域内の人にもよく理解されていません。

非主流派が不満の受け皿に

そうしたわかりにくさもあり、人々にとって欧州議会は疎遠な存在です(実際は、他国との貿易協定、EUの移民政策・環境規制、欧州中央銀行(ECB)の人事などで重要な役割を担っているのですが)。

そのため国内の選挙に比べ欧州議会選挙への関心は低く(ただ、今回の投票率は前回比上昇)、あえて投票を行うのは、内政に不満を持つ人が多くなりがちです。この結果、非主流派が票を得やすい性質を帯びます。今回はEU懐疑派が議席を増やしましたが、単に不満の受け皿となっただけ、と言えます。

EU懐疑派は主流になり得ず

よって、今回の選挙結果を「反EU感情の広がり」と解釈するのは誤りです。むしろEUへの支持は、前回選挙時(5年前)よりも増えているのです(域内全体の直近調査では、EUを支持する人が60%超)。

ただ、フランスやイタリアのEU懐疑派は、内部からEUを弱体化(各国の権限を強化)しようと目論んでいます。その急先鋒は、反移民などを唱える極右です。しかしそのような勢力は、EUの主流派にはなり得ません。身勝手な自国中心主義に立つので、国をまたいで連帯することが難しいからです。

右傾化ではなく多様化

また今回は、マクロン仏大統領などが属するリベラル、ドイツなどのグリーンも議席を増やしました。つまり起こったのは、反EU化や右傾化ではなく、新しい価値観を反映した健全な多様化だと言えます。

その一方で議席を大きく減らしたのが、これまでEU統合を主導してきた左右の中道派です。両派の合計議席は今回、初めて半数を下回りました(ただ、親EUのリベラルやグリーンを合わせれば過半数に)。このことは今後、EUの合意形成を遅らせかねないという点で、若干の懸念材料かもしれません。

ブレグジットやユーロへの影響

今回の選挙による各国への影響にも要注意です。特に英国では、強硬なEU離脱を主張する「ブレグジット党」が最多議席を得ました。メイ首相の辞任表明も重なり、英国政治は一層混沌としそうです。

それらの点を踏まえても、今回の選挙結果は、少なくとも通貨ユーロの悪材料とはならないでしょう。親EU派が主流という状況は、変わりそうにないからです。極右勢力についても、恐れられたほどには票を伸ばせませんでした。不穏な動きを跳ね返すEUの底力は、多くの人が考えるよりも強いのです。

図表入りのレポートはこちら

http://www.skam.co.jp/newest_report/contents_type=8&type=topics

 

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