インドネシアの政治経済:ジョコウィ氏が期待される理由

2019/04/18

トルコやアルゼンチンとは全然違う

昨年、新興国の通貨(図表1)や債券、株式が一旦急落しました。しかし秋以降、特にアジアについては顕著に回復しています。ただ、アジア経済の健全さに鑑みれば、ことさら驚くことではありません。

アジア新興国市場の混乱は、トルコやアルゼンチンの通貨危機の「とばっちり」を受けたものでした。しかしインフレ率(図表2)などを踏まえると、トルコなどとアジアを同列に扱うのは相当無理がありました。米国の利上げ休止で市場が落ち着きを取り戻した今、アジアに資金が戻ってきたのは当然です。

インドネシアの弱みと強み

ただ、若干の危うさが残っているのは、経常収支や財政収支の赤字をかかえるインドネシアです。海外投資家への依存度が高い点も(例えば現地通貨建て国債の約4割を海外勢が保有)、弱点となり得ます。

とはいえインドネシアが近い将来に通貨危機に陥る可能性は、ほぼありません。同国の中央銀行は昨年、市場予想を超えて6回も利上げを行いました。通貨価値の防衛という使命を果たしたのです。高インフレにもかかわらず利上げをためらったトルコとは、政策への信頼性において大きな差があるのです。

ジョコウィ大統領が2期目に

4月17日には、インドネシアで5年に一度の大統領選や議会選が行われました。インフラ整備や規制緩和など、同国に必要な施策には健全な指導力が求められます。それだけに、選挙結果は要注目です。

特に注目される大統領選では、現職のジョコ・ウィドド氏(通称ジョコウィ)と元軍人のプラボウォ・スビアント氏の対決となりました。5年前と同じ一騎打ちです(大統領職は2期10年まで)。公式結果は5月に発表される見込みですが、出口調査などによると、ジョコウィ氏の勝利が確実とみられます。

支持の理由:人柄が信用できる

ジョコウィ氏は5年前、穏健な改革派として大統領に就任しました。謙虚・正直な人柄で、今も人気を集める人物です。その思想と政策は、「貧困の緩和」と「インフラの整備」が二本柱となっています。

インドネシアの経済成長率は5%程度が続き、目標(7%)未満です。とはいえ、主要な貿易相手国(中国、日本など)の景気停滞を踏まえれば、悪くない伸びです。また、貧富の格差を和らげる教育・医療の拡充、首都ジャカルタの悪名高い渋滞を緩和する鉄道整備などに関し、誇るべき実績をあげています。

ストロングマンの時代に

大統領選では、プラボウォ氏が勝つ可能性もわずかにありました。その場合、民主政の後退が危惧されたはずです。同氏は保守的なエリートに属し、急進的なイスラム勢力からも支持されているからです。

プラボウォ氏は減税など景気に配慮した公約も掲げているので、同氏が勝っても、市場のネガティブな反応は限定的だったと考えられます。それでも、世界中でストロングマン(独裁的な権力者)が威張り散らす今、庶民的なジョコウィ氏が勝利した方が、政治面でもインドネシアの健全さを際立たせます。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

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