インドの政治経済:「モディノミクス」で中国を超えられるか?

2019/04/10 <>

実感の乏しい経済成長

その国では、鳴り物入りで始まった経済改革はいまだ道半ばです。経済指標や金融政策は、政治的な圧力でゆがめられています。それでも政権は、近隣国との緊張をあおることで支持率を保っています。

ここで述べたいのは、インドのことです。その経済は、公式統計(2015年に算出法変更)によれば、年7%前後の成長率を続けています。しかし成長の実感を得られない人も多く、極貧層(国連定義)はまだ7千万人ほど存在します。人権の軽視(特に女性や低カースト層)といった問題も切実なままです。

「モディノミクス」と「ヒンドゥー・ナショナリズム」

2014年、インドの「良い時代」を約束して登場したのが、ナレンドラ・モディ首相です。その経済政策「モディノミクス」は、外資誘致、雇用創出、インフラ整備などからなる、意欲的な試みでした。

5年間を回顧すると、「クリーン・インド」運動によるトイレ増設など、成果もあります。しかし同じアジアの人口超大国・中国と比べ、豊かさの差は開く一方です(図表1)。現政権が鼓舞する「ヒンドゥー・ナショナリズム」の弊害も増えています(多数派のヒンドゥー教徒によるイスラム教徒迫害など)。

総選挙では与党勝利か

モディ氏への評価が分かれる中、4月11日、総選挙(下院選)が始まります(5月19日まで地域ごとに投票が行われ5月23日に一斉開票)。これは同氏の改革路線に対する賛否を問う、重要な選挙です。

年明けには、同氏の率いる与党・インド人民党(BJP)が苦戦、との見方が広がりました。12月、5つの地方選でBJPが敗北したからです。しかし最近の世論調査によると、同党が勢いを盛り返しています。そのため総選挙では与党連合が過半数を獲得し、モディ政権は2期目に突入、となりそうです。

金融市場はモディノミクス継続を期待

モディ氏にとって幸運だったのは、2月に「宿敵」パキスタンとの軍事的緊張が高まったことです。これを利用し、同氏は強いリーダーを演じ(「テロリストの拠点」を空爆)、人々の喝采を浴びたのです。

総選挙で与党勝利、との観測が強まるにつれ、インド株も上昇しています。他国に比べ出遅れていた今年のインド株でしたが、3月から急伸し、4月には過去最高値を突破するに至りました。モディノミクスはやや期待外れでしたが、もう少し長い目で見守りたい、というのが金融市場のスタンスなのです。

中国を超えられない理由

選挙が行われ、言論の自由も一応あるインドは「世界最大の民主主義国」と言われます。しかし多様な言語・宗教・カースト(身分)が混在する13億人の国民を民主的にまとめるのは、至難のわざです。

インドは本来、大きな潜在力を秘めています。しかし中国との大差は、そうしたまとまりのなさに起因します。教育水準や医療・衛生環境などでも、差は歴然です(図表2,3)。モディ氏が再選を果たしたとしても、特定の宗教に基づくナショナリズムをあおるだけでは、インドの「良い時代」は訪れません。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融市場の注目材料を取り上げつつ、表面的な現象の底流にある世界経済の構造変化を多角的にとらえ、これを分かりやすく記述します。
<本資料に関してご留意していただきたい事項>
※本資料は、ご投資家の皆さまに投資判断の参考となる情報の提供を目的として、しんきんアセットマネジメント投信株式会社が作成した資料であり、投資勧誘を目的として作成したもの、または、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
※本資料の内容に基づいて取られた行動の結果については、当社は責任を負いません。
※本資料は、信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。また、いかなるデータも過去のものであり、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。
※本資料の内容は、当社の見解を示しているに過ぎず、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。記載内容は作成時点のものですので、予告なく変更する場合があります。
※本資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。当社の承認無く複製または第三者への開示を行うことを固く禁じます。
※本資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第338号
加入協会/一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会