改正入管法と「移民」:偏見を捨て、開かれた国へ

2019/04/03

安倍政権の功績

安倍政権のもとで、日本は二つの点で大きく変わりました。第一に、円安が大幅に進んだことです。第二に、外国人(観光客と労働者)が増えたことです。第二の点については、「功績」かもしれません。

ただ外国人観光客の増加は、かなりの程度、円安のためです。円安は、外国人からみて日本の物やサービスが安くなった、ということだからです。それは「日本の安売り」にすぎず、日本人にとって良いかどうかは別の話です。また、外国人労働者の急増(図表1)についても、様々な問題を含んでいます。

外国人の受入れを本格化

外国人労働者は、今後さらに増える見込みです(政府によれば5年で最大35万人増)。入管法(出入国管理法)が改正され、4月1日に施行されたからです。画期的な外国人受入れ策と言えるでしょう。

すでに在留する外国人労働者は(高度専門職などを除き)、技能実習や留学生のアルバイトといった位置づけでした。それらの建前は、新興国の発展を支援するというものです。それに対し改正入管法は、人手不足が深刻な業種(建設、介護など)で外国人労働者を増やそうという、日本の都合に基づきます。

人権意識は十分か?

これは、日本の閉鎖性(図表2)を打破するための重要な一歩です。しかし、この点の議論は全く不十分です。外国人の受入れ態勢も整っていないので、送り出し国、日本の双方で混乱が発生しそうです。

最大の問題は、外国人の人権が守られるか、です。大半はアジア新興国出身の人であるだけに、過労や搾取、差別が横行しかねないのです。そうした非道を無くすには、高齢化に悩む日本に来て頂くことに関し、感謝の念が必要です。しかし残念ながら、新興国への偏見や優越感は、いまだに残っています。

「移民」という現実

政府や財界、一部のメディアも、本質的な議論を避けています。そうした逃避を表す論法は、受け入れるのは「原則5年以内の在留者」であって永住者ではない以上、「移民」ではない、というものです。

「移民」と呼べば、治安面で不安になる国民もいます。しかし「5年以内の在留者」は「(永住前提の)移民」よりも犯罪率が低い、とは言えません。よって、有期の在留か永住か、の議論は論点がずれています。開かれた国を目指すのか、を正面から論じるには、「移民」という言葉を統一的に用いるべきです。

時代は変わった

「移民」を認めず、偏見が残ったままでは、疎外感を感じる外国人も増えます。その結果、社会の秩序を乱す人が増えるかもしれません(ただし、外国人の犯罪率は本当に高いのか、は議論の余地あり)。

明るい動きもあります。世論調査によると、外国人労働者の受入れに賛成する人が若年層では過半を占めていることです(「移民」に賛成か、は不明)。しかし、安倍政権が外国人の増加を後世に残る功績とするには、日本人・外国人双方に「令和(秩序と調和)」をもたらす環境整備と意識改革が急務です。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

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