待望のタイ総選挙:民主主義なんか要らない

2019/03/27

アジアで選挙ラッシュ

アジアでは今年、多くの重要な選挙があります。3月24日にはタイで総選挙(下院選)が行われました。4月にはインドネシアの大統領選、4~5月にはインドの総選挙、夏には日本の参院選、と続きます。

中でもタイの総選挙には、独特の意味があります。2014年のクーデターで軍部が実権を握った後、初めての総選挙だからです。軍事政権は早期の総選挙を約束していましたが、何度も延期されました。この選挙がようやく実現したのです。しかし、これを受けて完全な民主政へ戻る、とは考えられません。

プラユット氏の首相続投は、ほぼ確実の模様

暫定の選挙速報によると、反軍政の「貢献党」が第一党、軍政派の「国民国家の力党」が第二党になりそうです(5月上旬に確定か)。ただし、いずれも下院(500議席)の過半数には届かない見込みです。

今後の焦点は、連立協議でどちらの勢力が下院の多数派を形成するか、です。ただ、ほぼ確実なのは、軍政を率いるプラユット現首相の続投です。首相選出において軍政派が断然有利になるよう、憲法が改正済みだからです(首相は下院・上院(250議席)の投票で選ばれるが、上院議員は全て軍政側が任命)。

民主主義には程遠い

このような法改正に加え、今回の選挙にあたり軍政派は様々な手段を用いて反軍政派を妨害しました(言論統制など)。そのため欧米の基準に照らせば民主主義には程遠く、「茶番劇」に近い選挙でした。

とはいえ、「軍政は国民の敵」と決めつけることはできません。陸軍出身のプラユット氏には独裁的なところもありますが、本人の汚職などは特になく、その人柄を慕う国民も少なくありません。また、タイの経済はクーデター翌年から持ち直し(図表1)、政治もクーデター前に比べむしろ安定しています。

「反軍政≒タクシン派」vs「親軍政≒反タクシン派」

一方、反軍政の「貢献党」は、元首相であるタクシン氏を支持しています。同氏は汚職判決を逃れて香港に亡命中ですが、農村部や貧困層を中心に根強い人気があり、いまも大きな影響力を有しています。

過去20年ほどのタイ政治は、このタクシン派と反タクシン派(都市の富裕層、軍部、官僚のほか、おそらく現国王も)の対立軸で展開されています。タクシン氏や妹のインラック前首相(亡命中)は、農村部の優遇政策などで人気を得ました。しかしエリート層にとっては、権益を脅かす危険な存在です。

なぜ軍政が好まれるのか?

短期的な投資の観点では、タクシン派の復権よりも、軍政派の勝利が好ましいでしょう。事実、総選挙で軍政派健闘と報じられた際、タイの株価や通貨は、他のアジア諸国に比べ底堅い動きを示しました。

これは、軍政継続で政策の一貫性が保たれる、と考えられているからです。例えば日本企業も、軍政下のタイの事業環境には安定的な評価を与えています(図表2)。投資家や企業がタイ、中国、日本などのアジア諸国に期待するのは、模範的な民主主義ではなく、体制継続による政治や経済の安定なのです。

図表入りのレポートはこちら

http://www.skam.co.jp/newest_report/contents_type=8&type=topics

 

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