短かった米中摩擦の「一時休戦」の賞味期限

2018/12/07

12月相場入りとなった今週の国内株市場ですが、これまでのところ日経平均は先週末より株価水準を切り下げる展開となっています。

 

11月終盤の日経平均は、値頃感が出てきたことに加え、「米中首脳会談で何かしらの進展があるのではないか」、「米FRBの金融政策スタンスが市場に優しい方向性に傾くのではないか(利上げの打ち止め感)」という、ふたつの期待感を背景に戻り基調を辿っていましたが、実際に、米中首脳会談という注目イベントを終えて迎えた今週は、週初の3日(月)こそ上昇したものの、翌4日(火)はインパクトのある大幅下落を見せており、その結果を好感した買いの賞味期限は短いものとなった格好です。

 

会談の具体的な内容については他の分析記事に譲りますが、少なくとも、交渉が破談して貿易戦争が激化してしまうのを回避できたことと、来年1月に予定されていた2,000億ドル相当分の中国製品に対する関税率の引き上げを90日間猶予して時間を稼いだことについては、ある程度評価されたと考えられます。

 

とはいえ、今回の会談の結果は、いわば「一時休戦」で、米中関係が改善に向けて大きく進展したわけではない点には注意が必要です。確かに、いくつかの分野については協議が開始される見込みであるほか、中国側による関税引き下げなどは早い段階で実施されそうですが、すでに発動されている中国製品への追加関税は現状のままですし、「中国側がどこまで譲歩できるか、それに対して米国側がどこまで妥協するか」という構図は残されたままです。

 

その後、これからの米中協議において、米国側の責任者がUSTR(米国通商代表部)のライトハイザー氏が務めることになると報じられました。同氏は対中強硬派とされ、今回の首脳会談を好感する買いが続かなかった理由のひとつとされています。これまでの協議を率いてきた穏健派のムニューシン財務長官から主導権が強硬派に移ったことで、米中摩擦の改善に向けた交渉は厳しいものになることが見込まれます。

 

そのため、90日間後の3月には中国で全人代(全国人民代表大会)という政治イベントが控えているスケジュール感でもあり、猶予期間のあいだに、交渉の進捗状況や要人発言、思惑等が絡んで市場のムードが好転と悪化を繰り返す展開が続きそうです。

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