米・中・朝の「三つ巴」は続く

2017/08/18

今週の国内株市場ですが、日経平均は週初14日(月)の取引時間中に19,500円を下回る場面があったものの、この日を境に下げ止まりを見せ、やや値を戻しての推移となっています。北朝鮮をめぐる情勢で目先の軍事行動への警戒が現時点でひとまず後退していることが大きな要因です。また、今週公表のFOMC議事録を受けた米国株市場は、利上げの後ずれ観測が高まったことで上昇していますが、日本株にとってはドル安(円高)になるため、こちらは追い風とならず、日経平均の戻りは勢いに欠いている印象です。

 

今後は、(1)「北朝鮮リスクの後退でどこまで株価を戻せるか」、(2)「米国の金融政策動向の影響見極め」、(3)「トランプ米大統領の政権運営」などが主な焦点になりますが、目先の優先順位は(1)が高そうです。直近の北朝鮮絡みのイベントとしては、先軍節(8月25日)、建国記念日(9月9日)などが控えているほか、8月21日~31日にかけては米韓の合同軍事演習が予定されており、これらのタイミングで緊張感が高まる可能性があります。

 

市場では軍事行動の有無だけが注目されがちですが、問題の本質である「北朝鮮の行動を抑制する有効的な手段」を見いだせない限り、リスクが燻り続けることになります。8月6日に国連安全保障理事会で、さらなる経済制裁決議が全会一致で採択されましたが、状況は改善していません。米トランプ大統領は北朝鮮に対する中国からの働きかけを求めてプレッシャーを掛けていますが、正直、難しい面があります。

 

というのも、中国も北朝鮮のミサイルの脅威に晒されているからです。「新型弾道ミサイルは中国全域を射程に収めた」という北朝鮮幹部の発言が報道として中国に漏れ伝わっています。米中ともに北朝鮮によるこれ以上の核ミサイル開発を停止させたいとの思惑は一致していますし、さらに、現在の金正恩体制になってからの中朝関係はあまり良くありません。

 

だからと言って、このまま北朝鮮の体制が崩壊して親米政権が誕生するのも中国にとっては避けたい状況です。「金正恩政権を倒し、金氏一族から次の指導者を担ぐ」というシナリオも中国と良好な関係だった金正男氏の暗殺によって絶たれてしまっています。中国が対北朝鮮の制裁を強化して関係がますます悪化すれば、北朝鮮から攻撃を受ける恐れもあるため、これが中国が北朝鮮に対して強気に出られない理由になっています。

 

北朝鮮は中国の支援がなければ生き延びられないのも事実ですが、北朝鮮の核開発は、米国に対等な核保有国としての立場を認めさせて様々な交渉を進めようとするだけでなく、中国に対しての外交カードでもあるわけです。

 

そんな中国の苦しい立場は8月11日の環球時報が掲載した論評に現れています。「北朝鮮が米国やその同盟国を先制攻撃した場合は、中国は中立を保ち、米国が朝鮮半島の政治版図を変えようと軍事攻撃をするなら、中国は行動を起こして阻止介入する」というもので、米朝双方への軍事行動を牽制する内容となっています。

 

直近で軍事行動がなくても、米・中・朝の「三つ巴」をめぐる攻防と思惑は長引きそうです。

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