「トランプ相場」は曲がり角に来たのか?

2017/03/24

3連休明けとなった今週の国内株市場ですが、米株市場安と円高の影響を受けて日経平均は軟調な動きが目立っています。3月22日(水)の取引では、前日比で414円の大幅安になったほか、翌23日(木)も節目の19,000円台を下回る場面が見られました。

 

その背景には、米トランプ政権による政策実行の遅れを警戒しはじめたというのが大筋の見方です。足元では最優先課題に掲げているオバマケア(医療保険制度改革)代替法案の審議が行われているのですが、審議が難航すればその後に打ち出される減税などの景気刺激策も後ろ倒しになるのではという構図です。

 

そのためか、昨年11月の米大統領選から始まったいわゆる「トランプ相場」の陰りを指摘する声も増えてきました。ただし、公表されるマクロデータを見る限り米国経済は堅調ですし、それを理由に先日のFOMCでは利上げが決定されています。直近の日米の株価下落は、今のところ先取りして上昇してきたトランプ政権の政策期待に対する軌道修正の動きと思われます。

 

政策実行の時間軸の後退だけであれば、市場への影響も限定的になると考えられますが、具体的な政策内容と規模が明らかになるにつれ、保護主義的な姿勢に対する警戒が再び浮上するかもしれませんし、話題づくりのために大統領令を連発して混乱の火種になってしまう可能性もあります。さらに、議会のとの関係が悪化すれば、政策の実現性に対して不安が高まるほか、「財政の崖」問題にもつながってくるため注意が必要です。

 

先週3月15日(水)は、米国のFOMCで利上げが決定した日ですが、同じく「2015年超党派予算法案」の期限日でもありました。この法案は、いわゆる「財政の崖」問題が懸念された2015年11月2日(水)に成立し、2017年3月15日(水)までは債務上限を適用しないというものです。つまり、現在は債務の上限が復活していることになります。

 

米国では債務の上限を議会が決めるのですが、トランプ政権は今後、「法案の期限延長」もしくは「債務上限の引き上げ」のいずれかの対応が必要になります。トランプ氏の経済政策は「カネを使う」ものが多く、政策の規模感も含めて議会との協調性が重要になってきます。

 

少なくとも、「トランプ相場」は政策期待だけで大きく株価を押し上げていく局面はひとまず終了し、今後は堅調な経済マクロ環境と、政権運営のバランスを見ながら方向性を探っていく局面に入った可能性が高いと言えそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

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