「チキンレース」の株価上昇が意味するもの
祝日三連休を控える今週の国内株市場も上昇基調が続いています。
12月21日(水)の日経平均は19,500円台乗せで取引がスタートしました。これまでにも何度か触れてきましたが、米大統領選挙後の急ピッチな株価上昇に対する警戒感が指摘されながらも、ドル高(円安)に牽引される格好で上値をトライするチキンレースのような株価上昇の印象です。「日経平均年内2万円も」という声も多く聞かれるようになりました。
上値追いの主な背景は、ドル高(円安)による国内企業業績の上振れ期待と、世界経済の回復基調です。
ドル高については、米国で先週開かれたFOMC(米連邦公開市場委員会)で1年ぶりの利上げが決定されたほか、今後の利上げペースの見通しがこれまでの2回から3回に増える見込みとなったことで加速しました。また、世界経済についても11月下旬にOECD(経済協力開発機構)が来年の経済成長見通しを引き上げています。さらに、株価が下落すれば日銀のETF買いが相場を支えるだろうというムードも追い風になっているようです。
ドル/円は12月21日現在で118円の水準ですが、年初のドル/円は120円台から一気に117円台に円高が進行する動きを見せていました。株価(日経平均)が年初の水準を回復・上抜けてきたことを踏まえると、「ドル/円は120円台まで行く」という声が出始めても不思議ではないのかもしれません。今後もドル高(円安)が進めば株価もそれに歩調を合わせるという構図です。
ただし注意したいのは、必ずしも「ドル高=リスクオン」ではないということです。日本にとっては円安メリットをもたらすためリスクオンが意識されがちですが、米高金利上昇によるドル高は新興国から米国への資金回帰を促し、新興国の外貨準備高が減ってしまい、通貨危機などの災いにつながる可能性があります。実際、中国の11月外貨準備高は2011年3月以来の低水準となりました。元々、中国景気の減速で外貨準備高は減少傾向だったのですが、トランプ次期米大統領の誕生が大きく影響したと中国当局は説明しています。
ドル高や米金利上昇による資金流出を防ぐため、新興国は自国通貨を支えるためのドル売り/自国通貨買いの為替介入を行う必要があります。また、外貨準備として保有している米国債の価格が下落してしまうことも外貨準備高の減少要因になっています。さらに、新興国の企業や政府はドル建て債務を多く保有しており、ドル高によって債務負担が増えてしまいます。
相場を動かすきっかけとなる米金融政策ですが、過去を遡ると、2013年の金融緩和の縮小(テーパリング)決定時や、2015年12月の利上げ決定時などは、いずれも当初は円安を好感する買いで反応したものの、新興国からのリスクオフムードが次第に強まり、株価が大きく下落する局面を迎えています。「二度あることは三度ある」というわけではありませんが、足元の相場状況にあまり浮かれない方が良いかもしれません。
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