「ギャップ」を抱えたままでは上昇は続かない

2016/10/07

今週の国内株市場ですが、これまでのところ比較的堅調に推移しています。日経平均は再び17,000円台を視野に捉える水準まで回復していますが、8月以降、この17,000円台をたびたびトライする場面があったものの、取引が盛り上がらない中での相場上昇だったため、長くは続きませんでした。

足元の上昇も、個別銘柄では商いが活発なものも散見されますが、全体的には薄商いが続いています。東証1部の売買代金が2兆円に届かない日が当たり前のようになっていますし、上昇の背景を探ってみても、外部要因の不安後退や円安傾向を受けてのものが中心で、しばらくは米利上げ観測による為替動向や、海外株市場と比較しての出遅れ感などに左右されやすい地合いが続きそうです。

その一方、国内発の買い材料は乏しい状況です。先日(9月20〜21日)の日銀の会合から約二週間経ちましたが、打ち出された政策(「長短金利操作付き量的質的金融緩和」&「オーバーシュート型コミットメント」)に対する評価は、時間の経過とともにネガティブな見方が増えているように感じます。

今後の日銀の金融政策への期待感が持ちにくくなっているほか、先週より臨時国会が召集されていますが、政策関連が日本株全体を押し上げるテーマに浮上していません。さらに、今月の後半からは、2016年4-9月期の決算発表が本格化しますが、為替の円高が響く輸出関連企業などを中心に業績の下振れ懸念が燻っています。

小康状態を保っているとされる国内景気も少し雲行きが怪しくなっています。9月末に公表された総務省の「家計調査」では、8月の家計消費支出が実質で前年比4.6%と大きく減少したことが話題になりました。一応、「台風などの悪天候によって、外出・外食などへの支出が減少した」という理由づけがされているものの、警戒が必要と思われます。

政府(安倍首相)は、「雇用の改善に伴って賃金が増えてきた」ことを強調していますが、税や社会保険負担が増えているため、可処分所得自体はあまり増えていません。現在、配偶者控除の廃止が国会で議論されていますが、実現されれば負担増による可処分所得が減少する家計が多くなるほか、日銀の目標としている物価上昇が実現すると、家計の購買力がさらに低下してしまうことになり、日本のGDPの6割以上を占める消費の動向が注目されるほか、各政策の整合性があまりとれていない印象でもあります。

直近の国内株式市場は年金や日銀の買いで支えられている面があり、実体経済との間でギャップを抱え始めています。こうしたギャップが解消されないと、市場に対する信頼にも影響し、下がるべき時に下げない、騰がる時に騰がらなくなってしまいます。かつてのように、「敢えて日本を買う」理由がなくなりつつあるのは寂しい限りです。

 

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